就業規則の作成・変更に必要な手続きとポイントは?

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今回のポイント

Q:就業規則の作成・変更に必要な手続きとポイントは?
A:必要な手続きは、労働者の団体的意見の聴取、労働基準監督署への届出、就業規則の労働者への周知の3つである。

労働基準法は、就業規則の作成・変更手続きとして、

  1. 労働者の団体的意見の聴取(第90条第1項)
  2. 労働基準監督署への届出(第89条)
  3. 就業規則の労働者への周知(第106条第1項)

の3つを定めています。

1. 労働者の団体的意見の聴取

作成・変更した就業規則について、労働者の過半数で組織する労働組合、労働組合がない場合は労働者の過半数代表者の意見の聴取が必要です。

ここでのポイントは、あくまで「聴く = 聴取」であり、同意までは不要です。

労働基準法第90条(作成の手続)
  1. 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
  2. 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。
Qちゃん
同意が不要なら「就業規則に反対」と言われても良いんですか?
A先生
はい。「反対である」も意見であり、意見を聴いたことになりますよ。

なお、過半数代表者の重要性、選出方法については以下で回答しています。

関連:なぜ、労使協定の過半数代表者は重要なのか?

関連:労使協定を締結する過半数代表者の正しい選出方法は?

2. 労働基準監督署への届出

作成・変更した就業規則について、労働基準監督署への届出が必要です。届出がされていない場合、労働基準法第89条違反となり、罰則(30万円以下の罰金)の対象となります。

ここでのポイントは、作成・変更した就業規則に加え、1の「労働者の団体的意見の聴取」の内容を書面として添付が必要ということです。

労働基準法第89条(作成及び届出の義務)
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

関連:就業規則の作成が義務付けられる「常時10人以上」の正しい数え方は?

書面(意見書)の書き方や労働基準監督署への届出については以下をご参考ください。なお、届出の際には、法的根拠が不明なのですが、慣例として就業規則(変更)届が必要です。

関連:就業規則を労働基準監督署に届出するときの意見書の書き方は?

関連:就業規則の変更届の記入例とポイントは?

3. 就業規則の労働者への周知

作成・変更した就業規則について、労働者への周知が必要です。

就業規則の周知をしていない場合、労働基準法第106条違反となり、こちらも罰則(30万円以下の罰金)の対象となります。

労働基準法第106条(法令等の周知義務)
使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、・・・(略)を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。

また、詳細は以下で回答していますが、そもそも周知されていない就業規則は無効です。

関連:なぜ、就業規則の周知は必要なのか?

Qちゃん
周知されていない就業規則はそもそも無効になるんですね。
A先生
はい。就業規則が働く上での会社と従業員のルールである以上、周知されていないルールを従業員に遵守させるというのはおかしな話ですからね。

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