労使協定を締結する過半数代表者の正しい選出方法は?

当事務所に寄せられる質問に、公平・中立な立場で、しかし正直かつ本音で回答します。
社労士事務所・業界の慣習の中には一般常識から考えておかしい部分が正直あります。しかし半ばタブーとされている質問であっても業界として信頼を得るためには、正直かつ本音で回答することが重要と考えます。

今回のポイント

Q:労使協定を締結する過半数代表者の正しい選出方法は?
A:労働者の過半数がその方の選任を支持していることが明確であり、民主的な手続きにより選出される必要がある。

過半数代表者の要件

過半数代表者となるのは、次のいずれの要件も満たす人です(労働基準法施行規則第6条の2第1項)。

  • 管理監督者でないこと
  • 協定当事者等を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法で選出された者であること
  • 使用者の意向によって選出された者でないこと

なお、3つ目の「使用者の意向によって選出された者でないこと」という要件は、平成31年4月1日から施行規則に追加された内容です。

ここからわかるのは、使用者の意向によって選出された過半数代表者、つまり法の趣旨を理解していない・無視していた会社がいかに多かったということです。

報道でも一時期、複数の有名な会社がこの問題を取り上げられていました。会社名はここでは書きませんが・・・

過半数代表者の正しい選出方法

以上の3つの要件を踏まえると、多くの会社でやっていそうな、以下のような選出方法はダメということです。

  • 企業が管理監督者として扱っている管理職を選出してはダメ
  • 従業員親睦会の幹事などを自動的に選任してはダメ
  • 使用者が指名してはダメ

特に「過半数代表者の要件」の2つ目「協定当事者等を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法で選出された者であること」という点は意外と忘れられがちですが、重要なポイントです。

つまり、過半数代表者を選出する際には、就業規則の意見聴取や労使協定の締結に必要な従業員の過半数代表者を選出するという目的を明らかにして、

  • 投票
  • 挙手
  • 労働者の話し合い
  • 持ち回り決議

など、労働者の過半数がその方の選任を支持していることが明確になる民主的な手続きで行う必要があるということです。

Q:則第6条の2に規定する「投票、挙手等」の「等」には、どのような手続が含まれているか。

A:労働者の話し合い、持ち回り決議等労働者の過半数が当該者の選任を支持していることが明確になる民主的な手続が該当する。

(平成11.3.31 基発第169号)

なお、管理職しかいない事業場での過半数代表者の選出方法については以下の記事で解説しています。

関連:管理職しかいない事業場における過半数代表者の選出方法は?

実務的な過半数代表者の選出方法

といっても、今までに過半数代表者の正しい選出方法を実施した経験がない会社では、どうすれば良いのかわからないかもしれません。

加えて、そのような会社の従業員では

  • 「なぜそんなことをしなくてはならないのか」というそもそもの話
  • 「従業員代表者なんてできない」「なにか不利益が生じないか」という不安
  • そして、投票、挙手、話し合いといった手続きの部分で「誰が仕切り役になって進めていくのか」

と様々な場面で、混乱が生じるケースが大半です。

そんなときこそ、社労士のような第三者の立場の者は、過半数代表者の必要性、過半数代表者の役割といった基本的なアドバイスをはじめ、民主的な選出を支援する役割を果たすことができます

ただ、以下で解説した記事のような問題もあり、実際に依頼できる社労士がどれほどいるのか、依頼したとしてもその社労士が信頼され役割を果たすことができるのかと考えると、現実的には、信頼できる社労士を見つけるところから始めるのが重要かもしれません。

関連:会社側・労働者側の立場に立つ社労士がいるのか?

Qちゃん
確かに「社長の味方」と称する社労士だと従業員の信頼を得られないでしょうし、「労働者の味方」と称する社労士だと社長からは煙たがられるでしょうね。
ちなみに、A先生は過半数代表者の選出の支援をしたことがあるんですか?
A先生
はい、ありますよ。
労使協定の重要性と正しい選出方法を説明すると会社側から支援をお願いされ、司会的な役割をすることが多いです。
ただ、初対面の従業員の方々からすると「こいつは何者だ?」ってところから始めるので結構大変なんです・・・

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