Q:就業規則の正しい周知方法とは?
A:労働基準法施行規則では3つの方法を示しているが、ポイントは、従業員がいつでも書面で見ることができる状態にしておくこと。
就業規則の周知が必要な理由は「なぜ、就業規則の周知は必要なのか?」で示したとおりですが、それでは、どのような方法であれば、会社は周知義務を果たしたことになるのでしょうか?
就業規則の周知の方法
就業規則の周知の方法として、労働基準法施行規則第52条の2では、以下の3つを例示しています。
- 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
- 書面を労働者に交付すること。
- 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
これらに共通するポイントは、従業員がいつでも書面で見ることができる状態にしておく、ということです。
1. 常時、見やすい場所に掲示・備え付け
「常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付ける」とは、職場、休憩場所など場所はどこでも良いのですが、従業員が誰でも手に取れるような場所に置いておくことを意味します。
注意点は、支店、営業所、店舗、工場など複数の事業場がある場合です。その場合、本社に掲示するだけでは周知義務を果たしたことにならず、それぞれの場所に掲示・備え付けをすることが必要です。
2. 書面を交付
これは文字通りの意味であり、すべての従業員に就業規則のコピーを渡すことで周知したことになります。
ただし、従業員が就業規則をコピーして外部に持ち出すことも可能になるため、持ち出し制限などセキュリティ対策の運用が必要になります。
3. 社内サーバーなどのイントラネットに掲載
「磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。」というのはわかりにくいかもしれません。
最近の運用方法で言えば、就業規則をPDFなどデジタル化し、従業員であればいつでも見ることのできる社内サーバーのイントラネットに掲載することです。
書面交付と異なり、デジタル化しておけば、ダウンロードや印刷できないように持ち出し制限をすることが容易なので、最近の主流の方法です。
ただし、通常業務でPCを一切触ることがない従業員がいる場合には、周知義務を果たしていないと判断される恐れもあるため、1や2の方法を組み合わせることも検討すべきです。
周知義務違反となる例
以下の方法の場合は、周知義務違反となるため要注意です。
- 管理職、本社の従業員のみといった一部の従業員への周知
- 口頭による説明のみの周知
- 金庫などの保管
就業規則はすべての従業員に周知しておく必要があります。
本社のみに掲示・備え付けるといった状態では、他の支店や営業所などの従業員が見ることができないため、周知したことにはなりません。
では、従業員からの請求があった場合に見せるといった方法ではどうでしょうか?
- Q:就業規則等の周知方法について、労働者の請求があった場合に見せる方法でも、当該事業場に備え付けているものと解してよいか。
- A:就業規則等を労働者が必要なときに容易に確認できる状態にあることが「周知させる」ための要件である(平成11.3.31 基発第169号)
「よいか」という質問に対して「良い・悪い」と回答しておらず、質問への回答になっていないのですが、「容易に確認できる状態にあること」が必要ということでしょう。
請求があったときに、絶対に断わらない、イヤな顔をしない、といったことであれば良いとも言えますし、そもそも請求がなくても見ることのできる状態にすべきであり悪い、とも読めます。
なお、いまだに「金庫」などに厳重に保管している会社もありますが、客観的に見て周知しているとは言いがたい状態なのでやめておきましょう。
就業規則を大事な資料として扱うのは良いことですが、周知していない就業規則は無意味ということが伝わっていないんでしょうね。就業規則の作成・変更を依頼された社労士がしっかりと周知の重要性を伝えるべきなのですが・・・。