Q:リファラル採用で従業員に報奨金を支払ってもよいか?
A:原則として報奨金の支払いは違法であるが、就業規則を用いて賃金または賞与の一部と整理することで可能となる。
最近話題になっている「リファラル採用」とは、
- 従業員に人材を紹介してもらい採用に結び付ける採用手法
です。英語で「リファラル(Referral)」は「紹介」を意味するので、従業員紹介制度と呼ばれることもあります。
2種類の労働者募集
労働者の募集については、職業安定法第4条第5項の規制に違反しないか注意が必要です。
- 職業安定法第4条(定義)
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- この法律において「労働者の募集」とは、労働者を雇用しようとする者が、自ら又は他人に委託して、労働者となろうとする者に対し、その被用者となることを勧誘することをいう。
この条文から、労働者募集には、
- 自ら勧誘(直接募集)
- 他人に委託して勧誘(委託募集)
の2種類があることがわかります。
そして、委託募集を行う場合は、厚生労働大臣の許可(と認可)、または届出が必要になります。
- 職業安定法第36条(委託募集)
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- 労働者を雇用しようとする者が、その被用者以外の者をして報酬を与えて労働者の募集に従事させようとするときは、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。
- 前項の報酬の額については、あらかじめ、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。
- 労働者を雇用しようとする者が、その被用者以外の者をして報酬を与えることなく労働者の募集に従事させようとするときは、その旨を厚生労働大臣に届け出なければならない。
なお、第1項に違反した場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(職業安定法法第64条)、第2項・第3項に違反した場合は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金(同法第65条)の対象になります。
リファラル採用は直接募集
リファラル採用は、自社の従業員(被用者)が勧誘するので、直接募集に該当すると考えられています。そのため許可も届出も不要です。
ただし、直接募集に関して、職業安定法第40条では報酬の供与を禁止しています。
- 職業安定法第40条(報酬の供与の禁止)
- 労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第36条第2項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。
なお、違反した場合は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金(同法第65条)の対象になります。
賃金であれば報酬の支払いは可能
職業安定法第40条では報酬の供与を禁止していますが、「賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は・・・を除き」となっているため、逆に言えば、
- 賃金、給料その他これらに準ずるもの
であれば報奨金(紹介料)を支払ってもよい、つまり職業安定法違反にはなりません。
労働基準法上の「賃金」または「臨時の賃金等」(賞与など)として支払うことで、報奨金(紹介料)を支払うことができますが、労働基準法第89条により、就業規則の中には記載すべき事項が定められています。
- 賃金:絶対的必要記載事項
- 臨時の賃金等:相対的必要記載事項
であるため、報奨金(紹介料)を「賃金」または「臨時の賃金等」と整理するためには、就業規則で明確に定めておく必要があります。