就業規則の作成・見直しの費用を比較する際の注意点は?

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今回のポイント

Q:就業規則の作成・見直しの費用を比較する際の注意点は?
A:「就業規則本則」の費用でなく、労働基準法が求める「就業規則」の総額を確認する。

就業規則の作成・見直しを検討する際に、社労士事務所のウェブサイトで必要な費用を調べていると、以下のような料金表を見ることが多々あります。実際の費用は社労士事務所によって様々ですが、今回は以下の料金表をもとに解説します。

作成する書類 費用
就業規則本則 200,000円
賃金規程 100,000円
育児・介護休業規程 50,000円
非正規従業員規程 100,000円
継続雇用規程 50,000円
退職金規程 50,000円
社有車管理規程 50,000円
自動車通勤規程 50,000円
出張旅費規程 50,000円
慶弔見舞金規程 50,000円
その他の規程 50,000円

就業規則本則で比較してはダメ

Qちゃん
労働基準法で「就業規則」が求められているから、20万円の「就業規則本則」を依頼すれば良いんですよね?
A先生
労働基準法が求める「就業規則」と「就業規則本則」は全然違うので注意が必要です。

まず、上の料金表を見て、「就業規則本則」のみで20万円と判断するのは間違いです。

以下の記事でも解説していますが、そもそも「就業規則本則」という用語に明確な定義はなく、社労士事務所が勝手に命名しているものです。

関連:就業規則本則とは何か?

絶対的必要記載事項で見ると35万円

就業規則には、絶対に記載しなければならない事項「絶対的必要記載事項」、会社内でルールとして定めた場合に記載しなければならない事項「相対的必要記載事項」というものがあります。

上の料金表で言えば、「賃金規程」「育児・介護休業規程」が絶対的必要記載事項に該当するため、最低35万円が必要になります。

作成するもの 費用
就業規則本則 200,000円
賃金規程 100,000円
育児・介護休業規程 50,000円
合計 350,000円
Qちゃん
絶対に必要なものなら、最初から35万円の「就業規則の基本パッケージ」とした方が親切だと思いませんか?
A先生
社労士事務所として費用を安く見せたいという意思が働くのかもしれません。ただ、就業規則本則だけでは労働基準法違反になるため、結局は無意味なのですが。

なお、就業規則で記載しなければならない「絶対的必要記載事項」「相対的必要記載事項」については以下をご参考ください。

関連:就業規則で記載しなければならない内容は?

正社員以外、再雇用者がいれば50万円

そして、上の料金表には「非正規従業員規程」というものがあります。

これは、おそらく正社員以外の従業員、つまり

  • パート・アルバイト
  • 1年単位等の「有期雇用契約」(よく契約社員と呼ばれます)

に適用する就業規則を指すのでしょう。

また、「継続雇用規程」というものもあります。これは、おそらく定年後の再雇用の従業員に適用する就業規則を指すのでしょう。

ここで、ようやく「就業規則本則」とは正社員用の就業規則を指すことがわかります。

しかし「就業規則本則」という用語を使うのであれば、本来は、

  • 非正規従業員規程 → 就業規則 - 非正規従業員用
  • 継続雇用規程 → 就業規則 - 継続雇用者用

といった用語に統一しておきたいところです。

Qちゃん
「非正規従業員規程」は「非正規従業員用の就業規則」、「継続雇用規程」は「継続雇用者用の就業規則」ということなんですね。なぜ、規程と規則という言葉を使い分けているんでしょうか?
A先生
「就業規則本則」にぶら下がっている形と誤認しているのかもしれませんね。あるいは、労働基準法で求められる就業規則というものを理解していないのかもしれません。

「就業規則本則」「非正規従業員規程」「継続雇用規程」となっている場合、一見すると「すべての従業員に適用される就業規則を作成しなければならない」という労働基準法に違反しているように見えます。

もちろん、名称ではなく実態が重要であるため、すべての従業員に適用される就業規則が作成されていれば問題はありません。

しかし、そもそも並列の内容であるものが、規則や規程として存在するのは並びとしておかしい、つまり整理整頓がなされていない、という状態であり、センスが悪い気がします。

話を戻すと、就業規則の作成を依頼する会社に、正社員以外にパートや契約社員、再雇用の従業員がいる場合は、「非正規従業員規程」「継続雇用規程」も法的な義務として必要になるため、以下を合計して最低50万円が必要になります。

作成するもの 費用
就業規則本則 200,000円
賃金規程 100,000円
育児・介護休業規程 50,000円
非正規従業員規程 100,000円
継続雇用規程 50,000円
合計 500,000円
Qちゃん
また費用が高くなりました!
A先生
正社員だけの会社というのもあるでしょうけど、仮に正社員だけでも60歳定年であれば継続雇用・再雇用が発生します。そのため、継続雇用規程(本来は「就業規則 - 継続雇用者用」とすべきですが・・・)」は、ほぼ絶対必要になるでしょうね。

退職金制度の定めをすれば55万円

もし、依頼する会社が退職金制度の定めをする場合、「相対的必要記載事項」となるため、以下を合計して最低55万円が必要になります。

作成するもの 費用
就業規則本則 200,000円
賃金規程 100,000円
育児・介護休業規程 50,000円
非正規従業員規程 100,000円
継続雇用規程 50,000円
退職金規程 50,000円
合計 550,000円

総額75万円になる場合もあり

その他、営業車などの社有車の管理、自家用車による通勤、出張旅費、慶弔見舞金の定めをするのであれば、なんと総額75万円も必要になります。

作成するもの 費用
就業規則本則 200,000円
賃金規程 100,000円
育児・介護休業規程 50,000円
非正規従業員規程 100,000円
継続雇用規程 50,000円
退職金規程 50,000円
社有車管理規程 50,000円
自動車通勤規程 50,000円
出張旅費規程 50,000円
慶弔見舞金規程 50,000円
合計 750,000円

また、営業上手な社労士であれば、さらにマイナンバーの管理、安全衛生の管理などにも規程があった方が良いということで、5万円 × 必要数、が請求されることになります。

作成するもの 費用
就業規則本則 200,000円
賃金規程 100,000円
育児・介護休業規程 50,000円
非正規従業員規程 100,000円
継続雇用規程 50,000円
退職金規程 50,000円
社有車管理規程 50,000円
自動車通勤規程 50,000円
出張旅費規程 50,000円
慶弔見舞金規程 50,000円
その他の規程 50,000円 × 必要数
合計 800,000円以上
Qちゃん
20万円だと思って相談したら、実際には80万円以上が必要となったらびっくりしますね。
A先生
料金表がまずいというよりは、依頼主にとって何が必要で、総額いくらになるのか参考価格でも示しておいた方が親切でしょうね。今回の例だと、一般的な会社の場合、50万円はほぼ必須になるでしょうから。
Qちゃん
最初に20万円だと思っていたので、2.5倍の50万円がほぼ必須ってわかったら怒りますよ😡

まとめ

今回解説したように、「就業規則本則」のみの費用を見て20万円と思って、依頼したら75万円になったというのはよくあることのようで、実際に当事務所の顧客から過去に遭遇したことがあると不満の声を聞いたことがあります。

以下の記事で解説していますが、労働基準法が求める就業規則は、会社の状況・考え方によって異なります。

関連:労働基準法が求める就業規則は何を指すのか?

そのため、社労士事務所のウェブサイトで就業規則の作成費用を比較する際には、以下の点にご注意ください。

  1. 自社にとって労働基準法上必要になる「就業規則」の一式を明確にする
  2. 必要な「就業規則」の一式の総額を比較する

あえて総額の報酬額を明確にせず、見積もり依頼があったら、その後に営業をかけるという社労士事務所もあるようですし、今回解説したように、必要な就業規則や規程は会社の状況によって異なるためで、総額を事前に示すのが難しいのは確かです。

また、価格交渉が好きという会社もあるでしょうし、複数の見積もりを取って比較したいという会社もあるでしょう。

ただ、その場合でも、あなたの会社にとって、労働基準法が求める就業規則の一式は何か、なぜ必要なのかという点を意識して、わからない場合はきちんと社労士に説明を求め、理解した上で比較することをオススメします。

Qちゃん
就業規則って、もっと簡単に、サッと作れるものだと思っていたので、どの社労士に頼んでも内容は同じで、料金比較だけすれば良いと思っていました。。。
A先生
残念なことに「就業規則は簡単に作れる」って無責任な記事を書く人がいますからね。私だったら自分の会社のルールを、社風や過去にあったトラブル事例などの経緯をまったく知らない他人である社労士がサッと簡単に作ってくるのはイヤですね。それに一旦作成してしまうと、不利益変更の問題が出てきますし。

関連:就業規則の作成費用の相場はいくら?

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