Q:なぜ就業規則の中で服務規律が最重要なのか?
A:就業規則の作成の目的は、働く上での会社と従業員のルールを明確にすることであり、そのルールの大半が服務規律であるため。
就業規則を定める目的
就業規則は、労働基準法により、従業員10人以上の事業場に作成が義務付けられています。
関連:就業規則の作成が義務付けられる「常時10人以上」の正しい数え方は?
しかし、これを単なる法律の義務だからと受動的に考えるのはもったいないことです。
そもそも就業規則の作成義務が課せられる法令の趣旨は、働く上での会社と従業員のルールを明確にしておきなさいということです。
- 人が集まり共同作業を行う上でルールは必要だと思いませんか?
- 誰も内容を知らないルールに意味はないと思いませんか?
みんなが認識し、守るからこそ、ルールには意味があります。だからこそ、就業規則には周知義務も課されています。
服務規律とは
服務規律とは「労働法第12版(菅野和夫)p690」によると、
- 狭義の意味では、
- 個々の労働者の服務(労働義務の履行)上の規律(就業・労務提供の仕方、職場のあり方)
- 広義の意味では、
- 服務に関する規範(狭義の服務規律)を中心として、企業財産の管理・保全のための規律、従業員としての地位・身分に基づく規律等、企業が労働者に対し設定する就業規則上の行為規範
とされています。また、服務規律と同義に用いられるものとして「企業秩序」という概念がありますが、理論的には、企業秩序はその一部として服務規律を包含するものと扱われています。
服務規律を定める目的
会社が服務規律を定める目的は、
- 企業秩序の維持のために、従業員に望む行動・望まない行動を具体的・事前にルールとして示し、トラブルを未然に防ぎ、会社を守ること
です。まさに、冒頭の「就業規則を定める目的」と一致します。だからこそ、就業規則の中で服務規律が最重要であると言えるわけです。
服務規律は、個々の従業員と締結する雇用契約書に定めることも可能ですが、従業員全体への適用を考えて就業規則で定める方が、一般的であり効率的です。
以下のような状況でよくトラブルが発生しますが、これらは明文化・共通化されたルールがないことが原因です。
- 暗黙のルールがある
- 人によって言うことが違う
- 後からルールを厳しくする
例えば、遅刻・早退・欠勤・休暇などの手続きで、誰に、いつまでに申請・連絡するのか、人または部署によって言うことが異なるのは困りますし、それが理不尽と感じるようなものであれば、従業員の不満につながるのは当然です。
まずは、前例主義にならず、1つ1つの目的から服務規律を明確化するところから始めるべきでしょう。
服務規律は任意の記載事項
「労働基準法が求める就業規則」は何を指すのか?というQ&Aで解説していますが、就業規則の記載事項は、
- 絶対に記載しなければならない「絶対的必要記載事項」
- 会社内でルールとして定めた場合に記載しなければならない「相対的必要記載事項」
の2つに分けられます。
服務規律は「相対的必要記載事項」、つまり任意の記載事項です。
任意の記載事項だからこそ、会社は独自に、そして自由にルールを作成できるとも言えます。
働く上での会社と従業員のルールを作成するのが就業規則の目的であり、そのルールの大半が服務規律となります。
だからこそ、就業規則を作成する上で、服務規律が最重要と言えるのです。