「これはヤバイ!」と思った就業規則はどんなものか?

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社労士事務所・業界の慣習の中には一般常識から考えておかしい部分が正直あります。しかし半ばタブーとされている質問であっても業界として信頼を得るためには、正直かつ本音で回答することが重要と考えます。

今回のポイント

Q:「これはヤバイ!」と思った就業規則はどんなものか?
A:「中身がヤバイ」「手続きがヤバイ」2種類の就業規則がある。

Qちゃん
ヤバイ就業規則なんてあるんですか?😲
A先生
それが結構あるんですよ😓

就業規則の中身がヤバイ

就業規則の中身、つまり内容について、

  • 法改正に対応していない
  • 記載内容に抜け・漏れがある
  • 記載内容が間違っている

といった就業規則を数多く見てきました。

それはそれで十分に「ヤバイ」就業規則ですし、他にも挙げ出すとキリがないため、今回は最も「ヤバイ」就業規則として、

  • 雇用区分が不明瞭

という点を紹介します。

まずは、以下の条文を見てください。

第○条
  1. この規則は、○○株式会社の従業員に適用する。
  2. パートタイマーの就業に関する事項については、別に定めるところによる。
  3. 前項については、別に定める規則に定めのない事項は、この規則を適用する。
Qちゃん
よく見る文章ですが、これが「ヤバイ」んですか?
A先生
ヤバすぎな可能性が高いです😓

上の例は、よくある条文ですが、まず以下のような構造になっています。

  • 会社のすべての従業員に適用する就業規則がある
  • パートタイマーへの適用のみ別の定めに委任している

一瞥しただけでも、以下のような問題点がすぐに思いつきます(他にもありますが今回は割愛します)。

  • 従業員の雇用区分は、パートタイマーとそれ以外の2つだけなのか?
  • パートタイマー以外の雇用区分に適用される労働条件(賃金の手当、退職金、休職の取扱いなど)はすべて同じなのか?
Qちゃん
確かに、契約社員、嘱託社員など、正社員とパート以外の人が働いている会社は多いですよね。
A先生
はい。それにこの条文だと、正社員とパートという構造にはなっていません。あくまで「パートタイマー以外の従業員すべて」と「パートタイマー」という構造です。
Qちゃん
構造で見るんですか?
A先生
はい。法令も構造的に作られています。構造の重要性を理解していない人が多いのですが、構造的に作っておかないと後々の修正が難しくなります。
Qちゃん
まるで建物みたいですね。建て増しを重ねる中で、導線がおかしな建物ってありますよね😢
A先生
次に2つ目ですが、これが実態を反映しているのなら問題はありません。
ただ、中小企業でも、正社員にだけ様々な手当が付与されるという会社は多いです。この構造では、正社員と同じ条件がすべて適用されることになります。
Qちゃん
それなら「賃金」の部分で、適用する雇用区分ごとに条文を変えればいいのでは?
A先生
それは1つの方法です。ただ、最初に「パートタイマー以外の従業員すべて」と「パートタイマー」に分けていますよね。賃金などの項目ごとにさらに分けて書いていくのは、構造的におかしいし、修正のときに複雑になります😓 シンプルが一番です。
Qちゃん
なるほど、だから構造が重要なんですね。

関連:中小企業はシンプルな就業規則で本当に良いか?

就業規則の手続きがヤバイ

就業規則にはいくつかの必須の手続きがあります。

にも関わらず、手続きを行っていない「ヤバイ」就業規則も多くあります。

Qちゃん
就業規則に必要な手続きは知っています。労働基準監督署への届出ですよね?
A先生
それも1つの手続きです。ただ、労働基準監督署への届出しか行っていないケースがかなり多いんです😓

周知していない無効な就業規則

就業規則は従業員に周知しなければなりません。

就業規則の周知をしていない場合、労働基準法第106条違反となり、罰則(30万円以下の罰金)の対象となります。

なにより、最高裁の判決で示されているように、周知されていない就業規則は無効です。

Qちゃん
周知されていないルールを守れと言われても困りますもんね。
A先生
はい。周知されていない法令を守るように言われても困るのと同じです。
Qちゃん
そんなに就業規則を周知していない会社が多いんですか? 社労士が関わっていたら当然指摘しますよね?
A先生
はい。かなり多いです😓 はじめて聞いたと驚く会社も多いんですよ。。。
Qちゃん
せっかく作ったのに、無効になるってヤバイですね😢

関連:なぜ、就業規則の周知は必要なのか?

同意取得手続きがなく無効な就業規則

もっと恐しいのが、就業規則の不利益変更のケースです。

Qちゃん
不利益変更とは何ですか?
A先生
簡単に言えば、従業員にとって不利益となる就業規則の変更のことです。

不利益変更になる就業規則の変更の場合は、従業員の同意を取得する手続きが原則です

にも関わらず、会社が不利益変更を伴う就業規則の変更をしておきながら、同意取得の痕跡が一切ない場合が多々あります。

Qちゃん
確かに、従業員に不利益となるような変更を会社が勝手にするのは困りますね。なぜ同意取得の手続きをしないんでしょうか?
A先生
そもそも同意取得が必要であることを知らない会社が多いんです。「過半数代表者の意見を聴く」という労働基準法の話と混同しているんです。
Qちゃん
でも、就業規則の変更に社労士が関わっていたら説明するんじゃないんですか?
A先生
少なくとも私が関わった会社では、社労士からそんな話は聞いたことがないって言うんですよ😓 真偽はわかりませんが。
Qちゃん
えぇーーー😢

不利益変更の際に同意手続きがなされていなければ、原則としてその就業規則の変更は無効となります(実際、無効と判断された裁判例は多々あります)。

もちろん、従業員にとって不利益な変更となるため、すべての従業員の同意が取得できるとは限りません。

その場合、労働契約法第10条による合理性により判断されることになりますが、今回はこの点の解説は割愛します。

Qちゃん
せっかくお金と労力をかけて就業規則を変更しても、それが不利益変更で同意取得などの手続きをしていなければ無効になるって・・・すべてムダってことですよね?
A先生
その通りです。お金と労力をかけて変更した意味がありません。お金をドブに捨てたようなものですね😓
Qちゃん
そもそも就業規則を変更するときって、トラブル対応が多いですよね? でも無効になるなら役に立たないってことですか?
A先生
はい。大体のケースが、トラブルがあって再発防止・予防策として就業規則を変更します。でも変更自体が無効であれば、同じトラブルが発生してまた解決できません。無効ですから。
Qちゃん
まさに「ヤバイ」就業規則ですね😢

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