Q:会社側・労働者側の立場に立つ社労士がいるのか?
A:社労士は、社労士法により公正な立場であることを求められており、全面的に片方の立場に立つことはありえない。
社労士は公正な立場
社労士制度の目的は、「事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資すること」、そして社労士の職責として「公正な立場」が求められています。
- 社会保険労務士法第1条(目的)
- この法律は、社会保険労務士の制度を定めて、その業務の適正を図り、もつて労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資することを目的とする。
- 社会保険労務士法第1条の2(社会保険労務士の職責)
- 社会保険労務士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない。
100%会社側・100%労働者側は不適切な表現
2014年11月24日、ある社労士が運営していたブログ「すご腕社労士の首切りブログ」において、「社員をうつ病に罹患させる方法」と題する記事が掲載されたことで、社労士は社会的な批判を浴びました。
この事件を踏まえて、全国の社労士会は、不適切な広告や情報発信など職業倫理等に反する行為をする会員社労士に対して、会則に基づき厳正に対処することにしています。
また、社労士会は職業倫理に関する研修を5年に1回しており、「社労士に求められる職業倫理」というテキストを発行しています。その中で、
- 100%会社側に立って労働者と戦います
- どんなときでも労働者の味方になります
という表現は不適切であると示されています。
顧問料を支払う会社側の立場を示すのは当然?
また、「社労士に求められる職業倫理」のテキストには、
- 事業主から顧問料をもらっているのだから、会社側という立場を示すことがどうして不適切になるのか
という質問を紹介し、その質問に対して、
- 社労士制度の目的が「事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資すること」にあることからすれば、労働者を大切にする会社の支援を行う立場であることを示すべきであり、労使の一方を敵視、排除するような立場であることを示す表現は不適切であろう
と回答しています。
もちろん、状況によって社労士が一方の立場に立って対応することは現実的にありえます。
例えば、服務規律に違反し改善しない従業員への対応であれば、会社側の立場になってアドバイスをします。
逆に、法違反であることを知りながら会社側が何の改善も行わなければ、従業員側の立場になり、会社側に是正を求めることもあります。
しかし、それは状況によって会社側・従業員側になるだけであり、むしろ「事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資する」という社労士制度の目的に沿ったものであり、全面的に片方の立場を示すものとはまったく異なります。
まとめ
以上をまとめると、
- 100%会社側に立って労働者と戦います
- どんなときでも労働者の味方になります
という表現が問題なのは「100%」「どんなときでも」という点であり、公正な立場が求められる社労士としてありえないわけです。
そもそも、会社の中において「従業員」と「社長」は敵対関係どころか、ともに働く仲間なわけですから。
問題のある社労士がいた場合は、社労士会に通報しましょう。