Q:社労士との提携を謳う助成金申請代行会社を信用してよいか?
A:社労士法に違反しているため、助成金申請代行会社、そして関与している社労士のどちらも信用してはいけません。
昨今、助成金・補助金ビジネスが流行しています。
助成金・補助金ビジネスは、助成金や補助金の申請を代行して行い、獲得した助成金・補助金額の10-20%などを成功報酬として要求するものです。
別にこのビジネス自体はなんら批判されるものではありませんが、雇用関係など労働社会保険諸法令に関する助成金の場合には、依頼者も注意が必要です。
まず、助成金申請代行会社を名乗る会社のビジネスモデルは以下の図のとおりです。
このビジネスモデルの問題点は以下の2つです。
- 依頼会社から委託された助成金申請代行業務が、雇用関係など労働社会保険諸法令に関するものであれば、社労士法第27条違反
- その業務を社労士に委託すれば、社労士法第23条の2違反
以下、これらの問題点を解説します。
助成金の申請代行業務は社労士の独占業務
まず、1点目ですが、雇用関係など労働社会保険諸法令に関する助成金の申請代行業務は、社労士法第2条に基づく社労士の独占業務となっています。
そのため、助成金申請代行会社が、雇用関係など労働社会保険諸法令に関する助成金の申請代行業務を行えば、社労士法第27条違反になります。
- 社労士法第27条(業務の制限)
- 社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務を業として行ってはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び政令で定める業務に付随して行う場合は、この限りでない。
なお、この第27条違反については、社労士法第32条の2により「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」という罰則まであります。
社労士法第2条第1項第1号から第2号までの業務は以下のとおりです。ただし、内容を理解しやすくするため、法律名の略称、条文の簡略化を行っています。
- 社会保険労務士法 第2条(社会保険労務士の業務)
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- 社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。
一 労働社会保険諸法令に基づく申請書等を作成すること。一の二 申請書等について、その提出に関する手続を代わってすること。一の三 労働社会保険諸法令に基づく申請、届出等、又は行政機関等の調査・処分に対してする主張若しくは陳述について代理すること。一の四 個別労働関係紛争のあっせんの手続、障害者雇用促進法、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、労働者派遣法、育児・介護休業法、パートタイム・有期雇用労働法の調停の手続について、紛争の当事者を代理すること。一の五 都道府県労働委員会が行う個別労働関係紛争に関するあっせんの手続について、紛争の当事者を代理すること。一の六 個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続であって、厚生労働大臣が指定する団体の紛争の当事者を代理すること。二 労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類を作成すること。
- 社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。
社労士は非社労士との提携が禁止
次に、2点目の「その業務を社労士に委託」という点については、社労士法第23条の2違反です。
この違反についても、社労士法第32条の2により「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」という罰則の対象になります。
- 社労士法第23条の2(非社会保険労務士との提携の禁止)
- 社会保険労務士は、第26条又は第27条の規定に違反する者から事件のあっせんを受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。
まとめ
「御社は助成金の対象です」「助成金で100万円がすぐにもらえます」などと営業を受け、「社労士と提携している」と後押しされたら、つい信じたくなるのが人間の心理なのは理解できます。
しかし、いつの世にも、そして悪質な輩ほど、そういった人間の心理につけこむのがうまいため、くれぐれもご注意ください。