
管理職は残業代の対象外なので、労働時間の把握義務はないんじゃないですか?

誤解の多い点なんです。社労士でさえ、そう思い込んでいる人がいそうですし・・・😅
まず、企業が人事管理上指定する「管理職」と労働基準法が定める「管理監督者」は別物です。
今回はその違いの解説は省略しますが、管理職 = 管理監督者の場合の「管理職の労働時間の把握義務はあるか?」という疑問に回答します。
2種類の労働時間の把握義務
会社が求められている労働時間の把握義務には、
- 労働基準法による労働時間の把握義務
- 労働安全衛生法による労働時間の把握義務
という2種類があります。

2種類あるということは目的が違うということなんですか?

はい。Qちゃんが先程「管理職は残業代の対象外なので、労働時間の把握義務はないんじゃないですか?」と指摘した点は労働基準法に関係する部分です。
労働基準法による労働時間の把握義務
労働基準法による労働時間の把握義務は、法令に直接定められているものではなく、厚生労働省が平成29年1月20日に策定した
で求められています。
ただ、管理監督者は、そもそも労働基準法第41条第2号により、労働時間規制の適用外です。
そのため、ガイドラインにおいても以下のように記載されており、管理監督者は労働時間の把握義務の対象外となります。
本ガイドラインに基づき使用者が労働時間の適正な把握を行うべき対象労働者は、労働基準法第41条に定める者(略)を除く全ての者であること。

なるほど。そもそも法規制の適用外だから、把握義務も対象外ということなんですね。

はい、その通りです。
参考:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
労働安全衛生法による労働時間の把握義務
労働安全衛生法による労働時間の把握義務は、同法第66条の8の3に定められていますが、管理監督者は対象から除外されていません。
- 労働安全衛生法第66条の8の3
- 事業者は、第66条の8第1項又は前条第1項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第1項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。
つまり、管理監督者は、労働安全衛生法による労働時間の把握義務の対象になります。

管理監督者は、労働基準法では労働時間の把握義務の対象外だけど、労働安全衛生法では対象になるということなんですね。ややこしい・・・

はい、その通りです。目的が違うから仕方ないとはいえ、ややこしいですね。
なお、労働時間を把握する方法は、労働安全衛生規則第52条の7の3に定められています。
- 労働安全衛生規則第52条の7の3
-
- 法第66条の8の3の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。
- 事業者は、前項に規定する方法により把握した労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存するための必要な措置を講じなければならない。