人事労務における法定3帳簿の1つである「労働者名簿」を作成していますか? 記載項目・記載内容は大丈夫ですか?
なお、法定3帳簿とは、
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 出勤簿
のことであり、労働基準監督署による調査では必ずチェックされる重要書類です。


労働者名簿とは?
労働者名簿とは、労働基準法第107条によって企業に作成が義務づけられている法定帳簿です。違反した場合は、30万円以下の罰金という罰則まである強行法規です。
よくある間違いですが、労働者名簿は作成して終わりではありません。変更があれば修正し、常に「最新の情報」にしておく必要があります。
- 労働基準法第107条(労働者名簿)
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- 使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。
- 前項の規定により記入すべき事項に変更があつた場合においては、遅滞なく訂正しなければならない。
労働者名簿の対象者
労働者名簿を作成する対象者は、日雇い労働者以外のすべての労働者です。
つまり、正社員だけではなく、契約社員、パート、アルバイトなど、雇用しているすべての労働者が含まれます。
除外できるのは、日雇い労働者だけです。


なお、派遣労働者は、派遣元が雇用しているため、派遣先に作成の義務はありません。
労働者名簿の記載事項
労働者名簿への記載事項は以下のとおりです。不備があれば法令違反になります。
- 労働者の氏名
- 生年月日
- 履歴
- 性別
- 住所
- 従事する業務の種類
- 雇入の年月日 退職の年月日及びその事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)
- 死亡の年月日及びその原因
- 労働基準法施行規則第53条
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労働者名簿(様式第19号)に記入しなければならない事項は、同条同項に規定するもの(注:労働者の氏名、生年月日、履歴)のほか、次に掲げるものとする。
- 性別
- 住所
- 従事する業務の種類
- 雇入の年月日
- 退職の年月日及びその事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)
- 死亡の年月日及びその原因
労働者名簿の様式
労働者名簿として、厚生労働省は、以下の「様式第19号」を示していますが、この様式に従う必要はありません。

重要なのは、記載事項を満たしているかどうかであり、その旨は、以下のとおり、労働基準法施行規則第59条の2で定められています。
- 労働基準法施行規則第59条の2
- 法及びこれに基く命令に定める許可、認可、認定若しくは指定の申請、届出、報告、労働者名簿又は賃金台帳に用いるべき様式(様式第24号を除く。)は、必要な事項の最少限度を記載すべきことを定めるものであつて、横書、縦書その他異なる様式を用いることを妨げるものではない。

労働者名簿の作成時の注意点:「履歴」
労働者名簿の書き方は、それほど難しいものではありません。ただ、「履歴」に関してはよく空白になっているものを見かけますが、履歴には、
- 所属部署の異動状況
- 出向などの配転状況
- そのときの業務内容 など
を記入することになっています。


なお、「従事する業務の種類」については、30人未満の事業場では記入する義務はありません。
労働者名簿の保存期間
労働者名簿は、労働者の退職、解雇又は死亡の日を起点として、5年間(当面は3年間の経過措置あり)の保存義務があります。
入社日が起点ではない点にご注意ください。
PCによる管理方法も認められていますが、求められたときに、すぐに表示・印刷ができることが条件となっています。
また、労働者名簿は、各事業場で作成することになっています。本社以外に支店などがある場合は、各事業場で作成・保管する必要があるためご注意ください。