経営における「少数精鋭」の本当の意味

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大辞泉によると、少数精鋭とは「人数は少ないが、すぐれた者だけをそろえること。」としています。

しかし、経営を行う上での「少数精鋭」という言葉は異なる解釈をすべきでしょう。

先日テレビ番組で、ライフネット生命保険株式会社の出口会長が以下のとおり発言していました。

少数精鋭とは、優秀な人を少数集めるのではなく、少数だから精鋭になるということである。 少数にすることで精鋭集団ができる。

業務が増えてくると、ついつい増員を考えてしまいますが、その前に、

  • 非効率な業務を減らす
  • 仕組み化することで効率化する
  • 外注する

といった業務の洗い出しから手を付けるべきです。

経営を続けていけば、業務量の変動は必ずあります。

これからも成長が続くという前提で、人を増やすのは危険です。

以前は意味のあった業務も無意味な業務になっている可能性があります。

石川島播磨重工業、東芝の社長、経団連会長を歴任し、行革の鬼と異名を取った土光敏夫氏も以下のように述べています。

少数精鋭という言葉がある。 この言葉には二つの意味がある。 一つは「精鋭を少数使う」ということである。 そしてもう一つは「少数にすれば皆が精鋭になりうる」ということである。

私は後者の意味を重視したい。 前者だとすでに出来上がった精鋭を自分の手元に集めるということで、虫がよすぎるというものだ。 後者では今自分の手元にいる玉石混交の人々を、玉にはますます磨きをかけ、石にはトレーニングによって玉に変えていこうということで全員の能力を底上げすることを意図している。

「少数で多くの業務をする」と聞くと、昨今ではついつい無茶な業務量を押し付けるブラック企業を連想してしまいますが、ここには明確な違いがあります。

ブラック企業の定義は様々ですが、行政の定義によると「労働者を使い捨てにする企業」です。

土光敏夫氏の言葉で重要な点は、磨きをかけ、トレーニングするという部分です。

そして、この有名な言葉の中で見過ごされがちな点ですが、「すでに出来上がった精鋭を自分の手元に集めるのは虫がよすぎる」という部分について、自社の人材育成もせずに、優秀な人材が欲しいと嘆いてばかりいる経営者はよくよく噛み締めておくべきです。

「従業員自らが考える自律的な組織を目指す」と豪語する経営者の話をよくよく聞いてみると、単なる放置組織となっているケースが多くあるんですよね・・・

世界で100万部を超えるベストセラーの「学習する組織 ― システム思考で未来を創造する」では、自律的かつ柔軟に進化しつづける「学習する組織」のコンセプトと構築法を説いていますが、組織を機能させるためには、個人・組織として不断の努力が必要なことがよくわかります。

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