「新卒の3人に1人は3年以内に辞める」とよく言われますが、この数字は、どの学歴、どの業種にも当てはまるのでしょうか?
思い込みやイメージではなく、データを踏まえて正しい状況を説明するのが当事務所のスタンスです。
今回は、厚生労働省が2026年(令和8年)10月23日に公表した「新規学卒就職者の離職状況(令和5年3月卒業者)」をもとに、新卒の就職後3年以内の離職率を、学歴別・事業所規模別・業種別に紹介します。
まず結論として、学歴別の3年以内の離職率は次のとおりです。
- 大学卒:31.2%
- 短大等卒:43.1%
- 高校卒:36.9%
- 中学卒:54.5%
「3人に1人」が当てはまるのは、実は大学卒と高校卒です。短大等卒は4割強、中学卒は5割を超えています。


離職率の集計方法
データを見る前に、この調査の離職率がどのように集計されているかを確認しておきます。
この調査は、アンケートではなく、事業所がハローワークに提出した雇用保険の加入(資格取得)の届出をもとにしています。生年月日や加入日などから新規学卒者と推定される就職者を数え、その後の離職日から離職率を算出しています。
- 令和5年3月1日から6月30日までに、新規学卒者として雇用保険に加入した者を「就職者」とする
- そのうち、令和8年3月31日までに、その事業所を離職した者を「離職者」とする
- 離職の理由(自己都合か会社都合か)や、離職後に就職したかどうかは問わない
つまり、ここでいう離職率は「就職した事業所を3年以内に離れた人の割合」です。
なお、離職率に決まった定義はありません。
期間を1年とするか3年とするか、分母を入社した人数とするか在籍している人数とするかで、数値は大きく変わります。他社や統計と比べるときは、期間と分母をそろえることが重要です。
学歴別の3年以内の離職率
それでは、学歴別の3年以内の離職率です。前年の令和4年3月卒業者と比べています。
以下はグラフを表示しています。
もしグラフが表示されていない場合はページの更新をしてください。
このグラフから、次のことがわかります。
- 大学卒は33.8%→31.2%(2.6ポイント低下)
- 高校卒は37.9%→36.9%(1.0ポイント低下)
- 短大等卒は44.5%→43.1%(1.4ポイント低下)
- 中学卒だけが54.1%→54.5%と上昇
中学卒を除き、前年より下がっています。ただし、大学卒でも3割を超えており、「新卒の3人に1人」という状況が大きく変わったわけではありません。
1年目・2年目・3年目の離職率
3年以内の離職率を、1年目・2年目・3年目に分けたのが次のグラフです。
学歴によって、辞める時期の傾向が異なります。
- 大学卒:31.2%のうち、1年目が11.0%。1年目から3年目までほぼ同じ割合で辞めている
- 高校卒:36.9%のうち、1年目が17.4%。3年以内に辞めた人の約半数が1年目に辞めている
- 中学卒:54.5%のうち、1年目が34.0%。約6割が1年目に辞めている
つまり、高校卒を採用する会社にとっては、入社後1年以内の定着が最も重要といえます。


大学卒の3年以内の離職率の推移
大学卒の3年以内の離職率について、昭和62年3月卒業者からの推移を示したのが次のグラフです。最新の令和5年3月卒業者を赤で示しています。
このグラフから、次のことがわかります。
- 平成4年3月卒業者(23.7%)までは、2割台にとどまっていた
- 平成7年3月卒業者(32.0%)からは、ほぼ一貫して3割を超えている
- 最も高いのは平成16年3月卒業者の36.6%
- 令和5年3月卒業者の31.2%は、平成30年3月卒業者と並び、平成22年3月卒業者(31.0%)以来の低い水準
「新卒の3人に1人が3年以内に辞める」という状況は、30年近く続いていることになります。毎年少しずつ上下しますが、3割を大きく下回る水準には戻っていません。
事業所規模別の3年以内の離職率
次に、事業所規模別の3年以内の離職率です。
高校卒、大学卒ともに、事業所の規模が小さいほど離職率が高くなっています。
- 1,000人以上の事業所では、高校卒24.4%、大学卒24.2%
- 5〜29人の事業所では、高校卒53.3%、大学卒50.6%と、5割を超える
規模の大きい職場では、相談できる上司や先輩が複数いたり、合わない場合に異動の選択肢があったりします。規模の小さい職場では、こうした逃げ道が少ないことが、離職率の差に表れていると考えます。
なお、この調査の規模は企業全体の従業員数ではなく、事業所の規模です。大企業であっても、従業員20人の営業所に配属された新卒者は「5〜29人」に数えられます。
関連:事業場とは? 事業所との違い・支店や営業所の扱い・「事業場名」欄の書き方
業種別の3年以内の離職率
最後に、業種別の3年以内の離職率です。離職率の高い順に並べ、業種計(平均)を赤、業種計を超える業種を黄、業種計以下の業種を青で示しています。
高校卒の業種別の3年以内の離職率
大学卒の業種別の3年以内の離職率
ワースト5の業種は今年も同じ
大学卒の離職率が高い業種の上位5つは、次のとおりです(「その他」を除く)。
| 順位 | 業種 | 離職率(R5.3卒) | 前年差 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 宿泊業、飲食サービス業 | 49.9% | ▲5.5ポイント |
| 2位 | 生活関連サービス業、娯楽業 | 49.8% | ▲4.9ポイント |
| 3位 | 教育、学習支援業 | 42.3% | ▲1.9ポイント |
| 4位 | 医療、福祉 | 39.1% | ▲1.7ポイント |
| 5位 | 小売業 | 38.1% | ▲2.3ポイント |
順位は年によって入れ替わりますが、この5業種がワースト5であることは毎年変わりません。高校卒でも、医療、福祉(49.4%)が3位に入るなど、ほぼ同じ顔ぶれです。
なお、「生活関連サービス業、娯楽業」は、日本標準産業分類の区分で、洗濯・理容・美容、旅行業、家事サービス、冠婚葬祭業、娯楽業などが含まれます。
製造業・建設業・医療福祉の離職率
現場を持つ主な業種について、前年と比べたのが次の表です。
| 業種 | 高校卒(R4.3卒→R5.3卒) | 大学卒(R4.3卒→R5.3卒) |
|---|---|---|
| 業種計 | 37.9%→36.9% | 33.8%→31.2% |
| 建設業 | 41.4%→40.9% | 30.5%→26.8% |
| 製造業 | 28.6%→27.0% | 21.2%→18.8% |
| 運輸業、郵便業 | 36.8%→35.4% | 31.5%→28.2% |
| 医療、福祉 | 49.2%→49.4% | 40.8%→39.1% |
建設業は、大学卒では業種計を下回りますが、高校卒では40.9%と業種計を上回っています。医療、福祉は、高校卒で5割近く、大学卒でも4割近い水準です。
一方、製造業は高校卒・大学卒ともに業種計を大きく下回っています。


離職率の高い業種で見直したい労務管理
離職の理由は人によってさまざまですが、会社の労務管理を工夫することで防げるものもあります。特に、入社前に伝えた内容と実際の働き方に差があると、早期の離職につながりやすくなります。
ここでは、新卒の定着のために見直したい点を、法令の定めとあわせて紹介します。
求人票・労働条件通知書と実際の働き方
会社は、労働契約を結ぶときに、賃金や労働時間などの労働条件を明示しなければなりません。
- 労働基準法第15条
- 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
- 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
- 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
明示した労働条件が事実と異なる場合、労働者は即時に労働契約を解除できます。遠方から就職した新卒者が帰郷する場合は、会社が旅費を負担しなければなりません。
また、2024年(令和6年)4月からは、就業場所と業務の「変更の範囲」も明示事項に加わりました。採用時の配属先だけでなく、将来の転勤や配置転換の可能性まで書面で示す必要があります。
募集の段階でも、職業安定法第5条の3により、求人票などで労働条件を明示する義務があります。求人票、労働条件通知書、就業規則、そして実際の働き方の4つが一致しているかが問われるところです。
関連:雇用契約書・労働条件通知書の割増賃金率の書き方 ─ 25%か125%か


配属後の教育・研修
新卒者は、仕事の進め方も職場のルールも知らない状態で入社します。
配属先の上司任せにすると、教え方にばらつきが出て、「何も教えてもらえない」という不満が生まれます。
研修の時間をどれだけ確保しているかは、会社によって大きく異なります。OFF-JT(通常の仕事を離れて行う研修)の受講時間の実態は、次の記事で紹介しています。
関連:OFF-JTとは? OJTとの違い・研修時間の扱い・パートへの実施義務と受講時間の実態
製造業や建設業など現場を持つ会社では、雇入れ時の安全衛生教育が労働安全衛生法第59条第1項で義務づけられています。危険な作業の手順を知らないまま現場に出ることは、離職以前に、労働災害の原因になります。
関連:雇入れ時教育とは? 対象となる従業員・教育内容と省略できる場合
労働時間と休日
残業の多さや休日の少なさは、新卒者が離職を考える大きな理由の一つです。
特に、求人票では「完全週休2日制」とうたっていても、実際には休日出勤が続くような状況は、労働条件の明示の問題にもなります。
休日の制度や年間休日数を同じ業種の会社と比べると、自社の立ち位置がわかります。
関連:【データ】完全週休2日制の導入割合(推移・企業規模別・業種別)と週休2日制との違い
関連:【データ】企業における従業員数別・業種別の平均年間休日数
関連:【データ】変形労働時間制(1年・1か月単位、フレックスタイム制)の導入状況
新卒の募集では職場情報の提供が求められる
新卒者を募集する会社には、青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法)により、職場の情報を提供することが求められています。
- 青少年の雇用の促進等に関する法律第13条
- 労働者の募集を行う者及び募集受託者は、学校(小学校及び幼稚園を除く。)その他厚生労働省令で定める施設の学生又は生徒であって卒業することが見込まれる者その他厚生労働省令で定める者(以下この条及び次条において「学校卒業見込者等」という。)であることを条件とした労働者の募集(次項において「学校卒業見込者等募集」という。)を行うときは、学校卒業見込者等に対し、青少年の募集及び採用の状況、職業能力の開発及び向上並びに職場への定着の促進に関する取組の実施状況その他の青少年の適職の選択に資するものとして厚生労働省令で定める事項(同項及び同条において「青少年雇用情報」という。)を提供するように努めなければならない。
- 労働者の募集を行う者及び募集受託者は、学校卒業見込者等募集に当たり、当該学校卒業見込者等募集に応じ、又は応じようとする学校卒業見込者等の求めに応じ、青少年雇用情報を提供しなければならない。
提供する情報(青少年雇用情報)は、同法施行規則第3条で次の3つの区分に分けて定められています。
- 募集・採用の状況:直近3事業年度の新卒採用者数と、そのうちの離職者数、平均継続勤務年数など
- 職業能力の開発・向上の取組:研修の有無と内容、相談役となる先輩などを割り当てる制度の有無など
- 職場への定着の促進の取組:月平均の所定外労働時間、年次有給休暇の平均取得日数、育児休業の取得状況など
すべての情報を提供することは努力義務ですが、応募者から求められた場合は、3つの区分ごとに1つ以上の情報を提供しなければなりません。ハローワークなどに新卒求人を申し込む場合も同様です(同法第14条)。
つまり、新卒を採用する会社は、自社の離職者数や残業時間を、応募者から問われうる立場にあります。数字が把握できていなければ答えられませんし、業種の平均より良い数字であれば、積極的に示すことができます。
関連:年次有給休暇とは? 付与日数・発生要件・パートの比例付与・時季変更権・時効と繰越
関連:面接で聞いてはいけない質問とは? NG質問の具体例・法的な位置付け・職業安定法の罰則


まとめ
「新卒の3人に1人が3年以内に辞める」と言われますが、データからわかる事実は次のとおりです。
- 令和5年3月卒業者の3年以内の離職率は、大学卒31.2%、高校卒36.9%で、前年より低下した
- 大学卒の離職率は、平成7年3月卒業者からほぼ一貫して3割を超えている
- 高校卒では、3年以内に辞めた人の約半数が1年目に辞めている
- 事業所の規模が小さいほど離職率が高く、5〜29人の事業所では5割を超える
- 業種による差は大きく、宿泊・飲食、生活関連サービス、教育、医療・福祉、小売の5業種は毎年ワースト5に入る
離職率の高い業種だからといって、あきらめる必要はありません。同じ業種・同じ学歴の平均と比べて自社の数字が良ければ、それは採用で語れる強みになります。
その一方で、求人票や労働条件通知書に書いた内容と、実際の配属先や労働時間が異なっている会社も見かけます。新卒者の早期の離職は、こうした差がきっかけになることが少なくありません。労働基準監督署の調査や従業員とのトラブルでも、同じ点が問題になります。
当事務所の場合
新卒の定着は、採用の段階で示した情報と、入社後の実際の働き方が一致しているかどうかに左右されます。求人票、労働条件通知書、就業規則、勤怠の実績のどれか1つだけを直しても、ほかとの整合がとれていなければ意味がありません。
あべ社労士事務所の代表社労士は、厚生労働省労働基準局で労働基準法令・労働安全衛生法令の政策立案に従事してきました。当事務所の労務監査では、労働条件の明示や労働時間の管理が、書類と実際の運用の両面で一致しているかを確認します。
求人票・労働条件通知書と実際の運用が一致しているか確かめるなら
経営労務診断基準の51項目と独自の労働安全衛生法の点検項目に沿って、厚生労働省労働基準局出身の代表社労士自らが点検します。
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