【データ】労働相談件数の推移と相談内容 ─ いじめ・嫌がらせ・自己都合退職・解雇(令和7年度)

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労働局や労働基準監督署に寄せられる労働相談と聞くと、まず「解雇」を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか?

実際には、平成24年度以降、最も多い相談は「いじめ・嫌がらせ」です。また、平成28年度からは「自己都合退職」の相談が「解雇」を上回っています。

今回は、厚生労働省が2026年(令和8年)7月7日に公表した「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」をもとに、労働相談の件数と内容の推移を紹介します。

まず、令和7年度のポイントは次のとおりです。

  • 総合労働相談件数は119万8,010件(前年度比0.3%減)で、18年連続で100万件を超えている
  • 120万件を下回ったのは、令和元年度以来6年ぶり
  • 民事上の個別労働紛争の相談件数は27万7,053件(前年度比3.5%増)
  • 相談内容は「いじめ・嫌がらせ」が55,614件で14年連続の最多。2位以下は、自己都合退職、労働条件の引き下げ、解雇、退職勧奨の順
  • 労働局長による助言・指導の申出で最も多いのは「労働条件の引き下げ」、あっせんの申請で最も多いのは「解雇」
Qちゃん
労働相談といえば解雇だと思っていましたが、今は違うんですね。
A先生
解雇の相談は、平成21年度の約6万9千件から、令和7年度には約3万3千件と半分以下になっています。代わりに増えたのが、いじめ・嫌がらせと自己都合退職の相談です。

総合労働相談と民事上の個別労働紛争の違い

データを見る前に、この調査で使われる2つの用語を確認しておきます。

総合労働相談とは、労働問題に関するあらゆる相談にワンストップで対応するため、国が設けている「総合労働相談コーナー」に寄せられた相談です。

  • 都道府県労働局、労働基準監督署、駅近隣の建物など378か所(2026年4月1日現在)に設置され、専門の相談員が対応する
  • 相談の中身は、法制度の問い合わせ、労働基準法などの違反の疑いがあるもの、民事上の個別労働紛争に分けて集計される
  • 労働基準法などの違反の疑いがあるものは、労働基準監督署などに取り次がれる

民事上の個別労働紛争とは、労働条件その他労働関係に関する事項について、個々の労働者と事業主との間で生じた紛争です。労働基準法などの違反に関するものは含まれません。

解雇、退職勧奨、いじめ・嫌がらせといった、法違反かどうかだけでは白黒がつかないトラブルが、ここに入ります。

なお、相談をするのは労働者だけではありません。令和7年度の民事上の個別労働紛争の相談のうち、労働者からが24万859件(86.9%)、事業主からが2万3,472件(8.5%)でした。

Qちゃん
意外と事業主からの相談も多いんですね。
A先生
弁護士や社労士と顧問契約を結んでいない会社はまだまだ多いのでしょう。

総合労働相談件数の推移

それでは、総合労働相談件数の推移です。100万件を初めて超えた平成20年度から示しています。

注意

以下はグラフを表示しています。
もしグラフが表示されていない場合はページの更新をしてください。

平成20年度に107万5,021件と100万件を超えてから、18年連続で100万件を超えています。

令和2年度には129万782件と過去最多になり、その後は令和6年度まで5年連続で120万件を超えていました。令和7年度は119万8,010件と、わずかに120万件を下回りましたが、高い水準が続いていることに変わりはありません。

令和7年度の内訳(延べ数)は次のとおりです。

  • 法制度の問い合わせ:78万3,579件(前年度比3.8%減)
  • 労働基準法などの違反の疑いがあるもの:22万9,156件(前年度比10.4%増)
  • 民事上の個別労働紛争の相談:27万7,053件(前年度比3.5%増)

全体の件数はわずかに減った一方で、法違反の疑いがある相談と、民事上の紛争の相談は増えています。

民事上の個別労働紛争の相談件数の推移

次に、民事上の個別労働紛争の相談件数です。

平成20年度の約23.7万件から増加し、令和3年度には28万4,139件と最も多くなりました。

令和4年度からいったん減っていますが、これは後で説明するとおり、パワーハラスメントの相談が別に集計されるようになった影響を含んでいます。令和7年度は27万7,053件と、再び増加しました。

相談内容別の推移

民事上の個別労働紛争の相談を、内容別にまとめたのが次のグラフです。

※ いじめ・嫌がらせは、令和4年4月から労働施策総合推進法上のパワーハラスメントの相談が別に集計されることになったため、令和3年度までと令和4年度以降とで集計の対象が異なります。グラフでは線を分け、令和4年度以降を破線で示しています。

令和7年度の件数は次のとおりです。

  • いじめ・嫌がらせ:55,614件(前年度比1.1%増)
  • 自己都合退職:38,386件(前年度比7.5%減)
  • 労働条件の引き下げ:33,368件(前年度比8.2%増)
  • 解雇:32,651件(前年度比1.8%増)
  • 退職勧奨:26,022件(前年度比1.6%増)

いじめ・嫌がらせは、平成24年度に解雇を上回って以来、14年連続で最多です。

ただし、2位の自己都合退職との差は約1.4倍です。令和元年度には2倍を超えていましたから、差は縮まっています。

なお、上の5項目のほかに「その他の労働条件」(59,647件)という項目があります。特定の内容に分類されない相談をまとめたもので、厚生労働省はこれを除いて「いじめ・嫌がらせが最多」としています。

令和4年度に「いじめ・嫌がらせ」が減って見える理由

グラフでは、いじめ・嫌がらせが令和3年度の86,034件から令和4年度の69,932件へ、大きく減っているように見えます。

しかし、これは相談そのものが減ったからではありません。2022年(令和4年)4月に、改正労働施策総合推進法のパワーハラスメント防止措置が中小企業にも義務化され、全面施行されたことによるものです。

厚生労働省は、この点を次のように説明しています。

令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況(注釈※5)
令和4年4月の改正労働施策総合推進法の全面施行に伴い、同法に規定する職場におけるパワーハラスメントに関する相談については同法に基づき対応されるため、「総合労働相談」のうち「法制度の問い合わせ」や「労働基準法等の違反の疑いがあるもの」として計上され、「民事上の個別労働関係紛争(のいじめ・嫌がらせ)」の相談件数には計上されていない。

つまり、令和4年度以降の「いじめ・嫌がらせ」には、労働施策総合推進法上のパワーハラスメントの相談が含まれていません。それでもなお最多の項目であり続けています。

パワーハラスメントの相談は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が、労働施策総合推進法の施行状況として別に公表しています。

年度労働施策総合推進法の相談件数うちパワーハラスメント(第30条の2関係)
令和5年度62,863件60,053件
令和6年度72,789件70,429件
令和7年度80,969件77,514件

出典:厚生労働省「令和7年度の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)における雇用均等関係法令の施行状況について」

パワーハラスメントの相談は、2年間で約3割増えています。

ただし、この件数と、上で紹介した「いじめ・嫌がらせ」の件数とは、集計の窓口も方法も異なります。両者を単純に足し合わせて「ハラスメントの相談件数」とすることはできない点にご注意ください。

Qちゃん
グラフだけ見ると、パワハラの相談が減ったように見えてしまいますね。
A先生
そうなんです。統計は、途中で集計の方法が変わることがあります。数字を引用するときは、注釈まで確認することが大切です。

平成28年度から自己都合退職が解雇を上回っている

解雇の相談は、平成21年度の69,121件をピークに減り続け、令和7年度は32,651件でした。

一方、自己都合退職の相談は、平成20年度の16,533件から増え、平成28年度に40,364件となって解雇(36,760件)を上回りました。それ以降、10年連続で自己都合退職の相談が解雇を上回っています。

自己都合退職の相談には、「退職を申し出たのに辞めさせてもらえない」「強く引き留められている」といった内容が含まれます。会社が辞めさせる場面よりも、従業員が辞めようとする場面でトラブルになることが増えている、とデータからは読み取れます。

関連:【データ】新卒の3年以内離職率 ─ 業界別・学歴別・事業所規模別(令和5年3月卒)

労働局から会社に連絡が来るとき

総合労働相談コーナーへの相談は、相談だけで終わるとは限りません。労働者が申し出れば、労働局が会社と労働者の間に入って、紛争の解決を図る制度があります。

  • 助言・指導:都道府県労働局長が、紛争の当事者に解決の方向を示し、自主的な解決を促す
  • あっせん:紛争調整委員会のあっせん委員(弁護士や大学教授などの専門家)が当事者の間に入り、話し合いによる解決を図る

令和7年度は、助言・指導の申出が9,616件(前年度比8.5%増)、あっせんの申請が4,486件(前年度比16.0%増)と、いずれも増えています。

内容別に見ると、次のとおりです。

順位助言・指導の申出あっせんの申請
1位労働条件の引き下げ(1,220件)解雇(892件)
2位いじめ・嫌がらせ(1,163件)いじめ・嫌がらせ(868件)
3位雇用管理等(937件)雇止め(475件)

助言・指導やあっせんの申出があると、労働局から会社に連絡が来ます。そのとき会社は、就業規則の定めと、それに沿って手続きを行ったかどうかを説明することになります。

Qちゃん
会社に、労働局からあっせんの通知が来た場合は、まず何を確認すればいいですか?
A先生
あっせんへの参加は任意ですが、無視してよいものではありません。何が争点になっているかを確認し、就業規則と実際の対応の記録を手元にそろえることから始めます。

労働局からの連絡にどう対応すべきか迷ったら
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データから見た、会社として備えておくべきこと

ここまでのデータから、会社として備えておくべきことを3つの観点から整理します。

ハラスメント防止措置と懲戒規定

2022年(令和4年)4月から、パワーハラスメントの防止措置は、規模を問わずすべての事業主の義務となっています。

労働施策総合推進法第30条の2第1項
事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

講じるべき措置の内容は、厚生労働省の指針(令和2年厚生労働省告示第5号)で定められています。その中には、パワーハラスメントを行った者に対して厳正に対処する方針と、その対処の内容を、就業規則などの文書に定めて周知することが含まれています。

就業規則に懲戒の事由として定められていなければ、ハラスメントを行った従業員を懲戒処分にすることはできません。

雇用環境・均等部(室)が令和7年度に雇用管理の実態を確認した3,034事業所のうち、1,714事業所で労働施策総合推進法の違反が確認され、2,525件の是正指導が行われています。防止措置は「相談窓口を置けば終わり」ではありません。

関連:就業規則で服務規律として定めておくべき内容は?

関連:なぜ、就業規則の中で服務規律が最重要なのか?

退職手続きの規定

期間の定めのない雇用契約について、民法は、労働者がいつでも解約を申し入れることができると定めています。

民法第627条第1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

就業規則で「退職の申出は1か月前までに」と定めている会社は多いですが、その定めがあっても、従業員の退職そのものを止めることはできないと解されています。

また、退職を思いとどまらせる目的で、違約金や損害賠償の額をあらかじめ定めることは、労働基準法で禁止されています。

労働基準法第16条
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

違反した場合は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です(同法第119条)。

自己都合退職の相談が多いことを踏まえると、就業規則では「辞めさせない」ための定めではなく、退職の申出から退職日までの手続きを明確にしておくことが重要です。

関連:労働基準法・労働安全衛生法の罰則一覧 ─ 拘禁刑への一本化と両罰規定

Qちゃん
退職を引き留めることはできないのでしょうか?
A先生
無理でしょうね。思い悩んだ末に従業員は退職の意思を伝えてきたと考えるべきです。むしろ退職が続かないように、改善すべき点に注力する方が会社にとって現実的です。

解雇・退職勧奨の注意点

解雇の相談は減っていますが、あっせんの申請では今も最多です。紛争になりやすい点に変わりはありません。

労働契約法第16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
労働基準法第20条第1項
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

解雇予告の義務に違反した場合も、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です(同法第119条)。

また、解雇の事由は、就業規則に必ず記載しなければならない事項です(同法第89条第3号「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)」)。

退職勧奨は、会社が従業員に退職を促すもので、従業員が応じるかどうかは自由です。退職勧奨そのものは違法ではありませんが、その態様が社会通念上相当な程度を超え、退職を強要したと評価される場合には違法になるとされています(下関商業高校事件・最一小判昭55.7.10)。

退職勧奨の相談は令和7年度に26,022件で、令和5年度から3年連続で増えています。面談の回数や時間、伝え方の記録を残しておくことが重要です。

関連:定年退職と定年解雇の違いは何か?

Qちゃん
退職勧奨なら、解雇と違って問題になりにくいと思っていました。
A先生
そう考える会社は多いのですが、退職勧奨も相談やあっせんの対象になっています。応じてもらえないからと面談を何度も繰り返すと、退職の強要と受け取られるおそれがあります。

まとめ

令和7年度の労働相談のデータからわかることは、次のとおりです。

  • 総合労働相談件数は119万8,010件で、18年連続で100万件を超えている
  • 民事上の個別労働紛争の相談では、いじめ・嫌がらせが14年連続で最多。令和4年度以降はパワーハラスメントの相談を含まない数字である
  • 平成28年度から、自己都合退職の相談が解雇の相談を上回っている
  • 助言・指導の申出、あっせんの申請は、いずれも前年度より増えている

ハラスメント、退職、解雇のいずれも、トラブルになったときに会社が拠り所にするのは就業規則です。ところが、懲戒の事由にハラスメントが定められていない、退職の手続きが実態と合っていない、といった就業規則は珍しくありません。

こうした不備は、労働局から助言・指導やあっせんの連絡が来たときや、労働基準監督署の調査を受けたときに、初めて表に出ることが多いのです。

当事務所の場合

労働相談の統計に表れる紛争の多くは、就業規則の定めと、実際の対応のどちらかに不備があるところから生じます。

あべ社労士事務所の代表社労士は、厚生労働省労働基準局で労働基準法令・労働安全衛生法令の政策立案に従事し、長野労働局監督課長として労働基準監督署による是正指導を統括してきました。当事務所の就業規則の作成・見直しでは、ハラスメントへの対処、退職の手続き、解雇の事由が、法令と実際の運用の両面で機能するかを確認します。

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参考:厚生労働省「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します

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