正社員とパートの違いについて、次のように理解していませんか?
- 正社員は月給制、パートは時給制
- 正社員は社会保険に加入し、パートは加入しない
- 正社員は期間の定めのない契約、パートは有期契約
- パートには賞与や退職金を出さなくてよい
いずれも、多くの会社で見られる運用ですが、これらは正社員とパートの法律上の違いではありません。
本記事では、パートタイム・有期雇用労働法による定義を確認したうえで、社会保険・雇用保険の加入、労働条件の明示、待遇差、就業規則について、2026年(令和8年)10月までの法改正を踏まえて解説します。


正社員とパートの違い(法律上の定義)
パートは「通常の労働者」より所定労働時間が短い労働者
パートタイム労働者については、パートタイム・有期雇用労働法(正式名称は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)が、「短時間労働者」として次のように定義しています。
- パートタイム・有期雇用労働法第2条第1項
- この法律において「短時間労働者」とは、一週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者(当該事業主に雇用される通常の労働者と同種の業務に従事する当該事業主に雇用される労働者にあっては、厚生労働省令で定める場合を除き、当該労働者と同種の業務に従事する当該通常の労働者)の一週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう。
つまり、パートとは、1週間の所定労働時間が、同じ会社の「通常の労働者」よりも短い労働者です。
行政通達は、どれだけ短ければ該当するかについて、わずかでも短ければ該当し、1割以上短いといった基準はないとしています。
呼び名も関係ありません。
「パート」「アルバイト」「嘱託」「準社員」などと呼び分けている会社もありますが、それは会社が決めた区分にすぎません。
法律上は、所定労働時間が通常の労働者より短ければ、呼び名にかかわらず短時間労働者として扱われます。
正社員は法律上「通常の労働者」
一方、「正社員」という言葉は法律にはありません。
パートタイム・有期雇用労働法で正社員にあたるのは、比べる相手となる「通常の労働者」です。
「通常の労働者」について、行政通達(平成31.1.30 基発0130第1号ほか)は次のように整理しています。
- 社会通念に従い、比較の時点でその会社において「通常」と判断される労働者をいう
- 具体的には、いわゆる正規型の労働者と、期間の定めのない労働契約を結んでいるフルタイム労働者(無期雇用フルタイム労働者)をいう
- いわゆる正規型の労働者かどうかは、期間の定めがないことを前提に、長期雇用を前提とした待遇か、賃金の主な部分の支払い方、賞与・退職金・定期昇給や昇格の有無などを総合的に考えて判断する
- 「通常」かどうかの判断は、業務の種類ごとに行う
ここから分かるのは、次の2点です。
1つ目は、正社員とパートを分けるのは、所定労働時間の長さだということです。月給制か時給制か、社会保険に加入しているかどうかで決まるわけではありません。
2つ目は、比べる相手となる「通常の労働者」を特定する段階では、期間の定めがないことや、長期雇用を前提とした待遇かどうかも判断材料になるということです。正社員がいない業務では、その業務に就いている無期雇用フルタイム労働者が、比べる相手になります。
有期雇用労働者も同じ法律の対象
この法律は、2020年(令和2年)4月(中小企業は2021年(令和3年)4月)に、それまでのパートタイム労働法を改正して、期間の定めのある労働契約を結んでいる「有期雇用労働者」も対象に加えたものです。
契約期間の有無と所定労働時間の長さは、別の軸であり、図にすると次のとおりです。
上の図で明らかなように、「正社員は無期、パートは有期」という整理は、契約期間の軸と所定労働時間の軸を混同しているということです。
なお「契約社員」という言葉にも法律上の定義はなく、フルタイムの有期雇用労働者を指して使われることが多い呼び名です。
無期契約のパートもいる
「うちのパートは全員有期契約だから」という会社もありますが、期間の定めのない契約で働くパートもいます。
介護施設などでは、家庭の事情で正社員と同じ時間は働けないものの、長く勤めてほしい人を、無期契約のパートとして雇うことは珍しくありません。
また、有期労働契約が更新されて通算5年を超えると、従業員は期間の定めのない契約への転換を申し込むことができます(無期転換ルール、労働契約法第18条)。会社はこの申込みを承諾したものとみなされるため、有期契約のパートを更新し続けていれば、無期契約のパートは自然に増えていきます。


社会保険・雇用保険の加入は「パートかどうか」で決まらない
社会保険の4分の3基準
健康保険・厚生年金保険では、パートかどうかではなく、所定労働時間と所定労働日数で加入を判断します。
1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が、いずれも同じ事業所の通常の労働者の4分の3以上であれば、パートであっても被保険者になります(いわゆる4分の3基準)。
「週30時間未満ならパート」「週30時間以上なら社会保険に加入」と説明されることがありますが、これは通常の労働者の所定労働時間が週40時間の会社に当てはまる数字にすぎません。
通常の労働者の所定労働時間が週36時間の会社であれば、4分の3は週27時間です。
4分の3未満でも加入する短時間労働者(適用拡大)
4分の3基準を満たさないパートでも、勤め先が「特定適用事業所」であれば、次の要件をすべて満たすと被保険者になります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 2か月を超えて雇用される見込みがある
- 学生でない
かつては「賃金の月額が8.8万円以上」という要件もありましたが、2026年(令和8年)10月1日に撤廃されました。
そして、特定適用事業所の範囲(企業規模要件)は、段階的に広がってきました。
| 時期 | 特定適用事業所の企業規模 | 主な変更点 |
|---|---|---|
| 2016年(平成28年)10月 | 501人以上 | 4分の3未満の短時間労働者への適用を開始(当時は雇用期間1年以上の見込み・月額8.8万円以上も要件) |
| 2022年(令和4年)10月 | 101人以上 | 雇用期間の要件を、通常の被保険者と同じ「2か月を超える見込み」に変更 |
| 2024年(令和6年)10月 | 51人以上 | — |
| 2026年(令和8年)10月 | 51人以上 | 賃金要件(月額8.8万円以上)を撤廃 |
| 2027年(令和9年)10月 | 36人以上 | 企業規模要件の段階的な撤廃が始まる |
| 2029年(令和11年)10月 | 21人以上 | — |
| 2032年(令和14年)10月 | 11人以上 | — |
| 2035年(令和17年)10月 | 要件なし | 企業規模要件を撤廃 |
ここでいう企業規模の人数は、法人単位で、厚生年金保険の被保険者の数で数えます。4分の3基準を満たさずに加入していないパートは含めません。
就業規則の作成義務の「常時10人以上」や、衛生管理者の選任義務の「常時50人以上」は、パートを含めて事業場単位で数えます。同じように人数で判断する要件でも、数える単位も対象者も異なる点にご注意ください。


雇用保険は週20時間以上(2028年10月から週10時間以上)
雇用保険も、パートかどうかでは決まりません。
1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上雇用される見込みがあれば、パートでも被保険者になります。
さらに、2024年(令和6年)の雇用保険法の改正により、2028年(令和10年)10月1日からは、週の所定労働時間が10時間以上の従業員にまで適用が拡大されます。
社会保険と異なり、雇用保険には企業規模の要件がない点にはご注意ください。
パートにも正社員と同じく適用されるルール
パートも労働基準法・労働安全衛生法上の「労働者」です。正社員と同じく、次のようなルールが適用されます。
- 年次有給休暇:所定労働日数が少ないパートにも、日数に応じて付与する(比例付与)
- 雇入れ時の安全衛生教育:雇い入れたときに、パートにも実施する
- 健康診断:一定の要件を満たすパートは、定期健康診断の対象になる
- 労働者名簿・賃金台帳:パートの分も作成する
- 教育訓練:職務の内容が正社員と同じパートには、職務の遂行に必要な教育訓練を正社員と同様に実施する
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パートを雇うときに明示が必要な労働条件
労働契約を結ぶときは、正社員・パートを問わず、労働条件を書面などで明示しなければなりません(労働基準法第15条第1項)。2024年(令和6年)4月からは明示事項が追加されています。
また、パート・有期雇用労働者には、パートタイム・有期雇用労働法第6条第1項により、追加の事項を文書の交付などで明示する義務があります。2026年(令和8年)10月1日からは、正社員との待遇の相違について説明を求めることができる旨も明示事項に加わりました。
| 対象 | 根拠 | 主な明示事項 |
|---|---|---|
| すべての労働者 | 労働基準法第15条第1項 | 契約期間、就業の場所・従事する業務(2024年4月から、その変更の範囲も)、始業・終業の時刻、休日、賃金、退職に関する事項など |
| 有期契約の労働者 | 労働基準法第15条第1項 | 更新の基準、更新上限の有無と内容(2024年4月から)。無期転換を申し込めるときは、その機会と転換後の労働条件(2024年4月から) |
| パート・有期雇用労働者 | パートタイム・有期雇用労働法第6条第1項 | 昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、相談窓口。待遇の相違の説明を求めることができる旨(2026年10月から) |
関連:雇用契約書・労働条件通知書の割増賃金率の書き方 ─ 25%か125%か
正社員とパートの待遇差(同一労働同一賃金)
多くの会社では、正社員とパートの間で、賃金の形態(月給制と時給制)、賞与、退職金、手当、転勤の有無などに差を設けています。こうした差を設けること自体は、法律で一律に禁止されているわけではありません。
ただし、パートタイム・有期雇用労働法は、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、通常の労働者との間に不合理と認められる相違を設けることを禁止しています(第8条)。職務の内容と、職務の内容・配置の変更の範囲が正社員と同じパート・有期雇用労働者については、差別的な取扱いそのものが禁止されます(第9条)。
今では生活給という考え方(年齢が上昇し、家族を扶養するようになっていくにつれて、賃金が上昇していくという考え方)に多くの方が馴染んでいますが、「同じ仕事なら同じ賃金」という考え方自体は、新しいものではありません。
「新しい労働社会―雇用システムの再構築へ」の中で詳しく紹介されていますが、1960年代には、政府や経済団体が、仕事の内容で賃金を決める職務給の導入を唱えていました。
しかし、実際に人員配置をする当の企業内の人事労務担当者が、職務給導入の動きに反発し、配置転換に対応しやすく、能力で評価する職能給を選んだ、これが歴史的な事実です。同一労働同一賃金を求めた企業経営者、それに反発した人事労務担当者、という皮肉な構図があったわけです。
こうした日本の賃金制度の成り立ちを前提に、現在の法律は、賃金を同一にすることまでは求めず、待遇の性質や目的に照らして不合理な差を禁止するという形をとっています。
パート・有期雇用労働者から求められた場合、会社は、正社員との待遇の相違の内容と理由を説明しなければなりません(第14条第2項)。何を基準に判断するかは、厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」が示しており、2026年(令和8年)10月1日に改正されています。


パートにも就業規則が必要
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければなりません(労働基準法第89条)。この「常時10人」には、パートも含めて数えます。
就業規則は、その事業場で働くすべての労働者について定める必要があります。パートに適用される規定がなければ、就業規則を作成したことにはなりません。正社員用とパート用を1つの就業規則にまとめるか、別に作るかは、会社が選ぶことができます。
正社員用の就業規則がパートに適用される場合のリスク
注意が必要なのは、正社員用の就業規則しかなく、その適用範囲が「従業員に適用する」とだけ書かれている場合です。
この場合、パートにも正社員用の就業規則が適用されると読まれる可能性が高くなります。
就業規則で定める基準に達しない労働契約は、その部分について無効となり、就業規則の基準によることになります(労働契約法第12条)。
つまり、パートの雇用契約書に「賞与なし」「退職金なし」と書いていても、正社員用の就業規則の賞与・退職金の規定がパートに及ぶと主張される余地が生じるという点には注意を払っておく必要があります。
退職金規程の適用範囲や、パート・契約社員の退職金の考え方は、次の記事で解説しています。
関連:退職金制度とは? 支払義務・給付建てと拠出建て(中退共)・不利益変更・懲戒解雇時の不支給
パートタイマー就業規則を別に作るときの注意点
パート用の就業規則を別に作るときは、少なくとも次の点を確認します。
- 正社員用とパート用の適用範囲が整合しているか(どちらにも当てはまらない人、両方に当てはまる人がいないか)
- 無期転換したパートに、どちらの就業規則のどの規定を適用するか
- 意見を聴く相手:労働基準法上は、パートを含む事業場の労働者全体の過半数代表者の意見を聴く。あわせて、パートの過半数を代表する者の意見を聴く努力義務がある(パートタイム・有期雇用労働法第7条)
- 正社員との待遇差について、その理由を説明できるか
- パート用の就業規則も、就業規則の一部として届け出ているか
関連:就業規則の意見を聴く過半数代表者は、正社員やパートによる別個の過半数代表者で良いのか?


違反した場合の罰則
| 違反の内容 | 根拠 | 罰則 |
|---|---|---|
| 労働条件を明示しない | 労働基準法第15条第1項、第120条 | 30万円以下の罰金 |
| 就業規則を作成・届出しない | 労働基準法第89条、第120条 | 30万円以下の罰金 |
| 昇給・退職手当・賞与の有無などを文書で明示しない | パートタイム・有期雇用労働法第6条第1項、第31条 | 10万円以下の過料 |
不合理な待遇差の禁止(第8条)に違反した場合の罰則はありませんが、待遇差について従業員から損害賠償を請求されるリスクはあります。
実務上の注意点
呼び名や契約書の名称で社会保険の加入を判断している
「パート」として採用したから社会保険に加入させない、という判断は誤りです。
社会保険への加入は、通常の労働者と比べた所定労働時間・所定労働日数と、適用拡大の要件で決まります。
2026年10月の賃金要件の撤廃で、特定適用事業所では、週20時間以上のパートは収入にかかわらず加入の対象になりました。
勤務時間が延びたパートや、契約上の時間と実際の働き方が異なるパートがいないかを確認する必要があります。
正社員用の就業規則の適用範囲が曖昧
正社員用の就業規則の適用範囲が「従業員」とだけ書かれていて、パートを除くことが明記されていない就業規則は少なくありません。
パート用の就業規則がない場合はもちろん、ある場合でも、両方の適用範囲がかみ合っているかを確認する必要があります。
労働条件通知書が改正前の様式のまま
労働条件通知書の様式を何年も見直していない会社では、2024年4月の「変更の範囲」や無期転換の明示、2026年10月の「説明を求めることができる旨」の明示が漏れていることがあります。
パートを多く雇う会社ほど、同じ様式を使い回しているため、影響が大きいため注意が必要です。
まとめ
法律上、正社員とパートの違いは、所定労働時間が通常の労働者より短いかどうかだけです。月給制か時給制か、社会保険に加入しているか、有期契約かどうかは、正社員とパートを分けるものではありません。
一方で、パートを雇う会社には、社会保険・雇用保険の加入の判断、労働条件の明示、待遇差の説明、就業規則の整備といった義務がかかり、そのいずれもが2024年から2028年にかけて改正が続いています。
「パートだから」という理由で扱いを決めている部分がないか、労働条件通知書と就業規則が改正に追いついているか、いずれも、労働基準監督署の調査や、従業員から説明を求められたときに問われる点です。
当事務所の場合
パートタイマーの就業規則は、正社員用の就業規則を改正するときに見直しから漏れやすく、改正前の内容のまま運用されていることが少なくありません。パートを多く雇用する会社ほど、その影響は大きくなるため注意が必要な点です。
あべ社労士事務所の代表社労士は、厚生労働省労働基準局で労働基準法令・労働安全衛生法令の政策立案に従事してきました。当事務所の就業規則コンサルティングでは、パートタイマー就業規則の有無だけでなく、正社員用の就業規則との適用範囲の整合、労働条件通知書の明示事項、正社員との待遇差の理由を説明できるかを含めて確認します。
パートタイマーの就業規則を、正社員用とあわせて整備するなら
厚生労働省労働基準局出身の代表社労士が徹底的にヒアリングし、御社の実態に沿った就業規則を作成します。
就業規則コンサルの詳細を見る参考:厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法」/厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」/日本年金機構「2026(令和8)年10月に社会保険の短時間労働者に係る賃金要件が撤廃されました」/厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方 第9 被用者保険の適用拡大」