雨で現場作業ができない日を休日にできるか?

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社労士事務所・業界の慣習の中には一般常識から考えておかしい部分が正直あります。しかし半ばタブーとされている質問であっても業界として信頼を得るためには、正直かつ本音で回答することが重要と考えます。

今回のポイント

Q:雨で現場作業ができない日を休日にできるか?
A:一律には答えられないほど、多くの法的論点を抱える難解な問題である。休日と休業の区別、休日の振替、割増賃金、労働時間制度の設計までを含めて検討する必要がある。

屋外で作業をする建設業などの会社から、「雨で現場作業ができないときに、その日を休日として扱ってよいか」という質問を受けることがあります。

「雨の日は休み」という扱いは、現場では当たり前のように行われています。しかし、労働基準法に当てはめると、論点の多い問題です。

「雨の日は休み」の何が問題になるのか

問題になるのは、その日が法律上「休日」なのか、それとも「休業」なのか、という点です。

  • 休日:就業規則や労働契約等により、あらかじめ労働義務がないと定められている日
  • 休業:本来は労働義務がある日(労働日)について、特定の事由により、その労働義務が免除または停止され、労働しないこと

どちらにあたるかによって、賃金の扱いが変わります。休業には、会社の都合によるもの、不可抗力によるものなど、事由による違いがあり、休業手当が必要かどうかも事由によって変わります。

なお、会社都合による休業(使用者の責に帰すべき事由による休業)の場合には、労働基準法第26条に基づき休業手当の支払い義務があります。

労働基準法第26条(休業手当)
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
Qちゃん
日給制の方の場合、働かなかった日は賃金が出ないものだと思っていました。
A先生
そう考えている会社は少なくありません。しかし、その日が休日なのか休業なのかで、扱いは変わります。まず、自社の「雨の日は休み」が、どちらにあたるのかを整理する必要があります。

関連:休日と休暇の違い、法定休日と所定休日の違い

休日の原則

労働基準法は、休日について次のように定めています。

労働基準法第35条(休日)
  1. 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
  2. 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

そして、休日は原則として暦日、つまり午前0時から午後12時(24時)までの丸1日を指すとされています(昭和23年4月5日基発第535号)。

雨が降るかどうかは、多くの場合、当日にならないと分かりません。一方、休日は暦日単位で、あらかじめ定めておくのが原則です。天候に左右される現場の実態と、休日の原則とが、かみ合いにくいところに、この問題の難しさがあります。

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行政通達の考え方

この点については、行政通達に質疑があります(昭和23年4月26日基発第651号、昭和33年2月13日基発第90号)。

質問:一般に屋外労働者に対しては休日を規定することは非常に困難を伴うが、雨天の日を休日と規定する如きは差し支えないか

回答:屋外労働者についても休日はなるべく一定日に与え、雨天の場合には休日をその日に変更する旨を規定するよう指導されたい

Qちゃん
この通達はどのように解釈すれば良いのでしょうか?
A先生
わかりにくいですよね。明確なのは「雨天の日を休日とする」と定めるだけでは足りないということ、そして振替休日を利用しなさいということです。ただ振替休日の運用自体には触れていないため、就業規則への書き方・運用に工夫が必要になります。

振替休日の適法な運用と割増賃金のリスク

雨で作業ができない日を休日として扱う方法として、休日の振替があります。あらかじめ休日と定めていた日と、労働日とを入れ替える方法です。

ただし、振替が適法と認められるかどうかは、就業規則上の根拠、振り替える日の決め方、従業員への伝え方とその時期といった運用面によって変わります。手続きを誤れば、休日として扱ったつもりの日が、会社都合の休業と評価されることになります。

さらに、振替が適法に行われたとしても、問題はそこで終わりません。振り替えた結果、ある週の労働時間が法定労働時間を超えれば、割増賃金の支払いが必要になります。

「雨の日に休ませた分を別の日に働いてもらう」という運用は、休業手当の問題を避けられたとしても、割増賃金という別の問題を生むことがあります。

天候リスクに対処するための制度設計

天候は、会社がコントロールできるものではありません。だからこそ、雨が降るたびにその場で判断するのではなく、天候による作業の中止があることを前提に、人事労務の制度全体を設計しておくという考え方が必要になります。

検討の対象になるのは、たとえば次のような点です。

  • 年間を通じた休日の配置
  • 変形労働時間制の採用
  • 屋外作業ができない日に行う業務の用意
  • 年次有給休暇の計画的付与

これらは、1つだけを取り入れても機能しません。就業規則、労使協定、賃金の定めと組み合わせて、はじめて機能します。

たとえば、建設業では1年単位の変形労働時間制を採用している会社が少なくありません。

しかし、変形労働時間制は、労働日と労働時間をあらかじめ特定することを前提とした制度です。そのため、休日の振替には制約があります。通常の場合と同じ感覚で休日を動かすと、制度の要件を満たさなくなることがあります。

Qちゃん
「雨の日をどうするか」というだけの話ではないんですね。
A先生
そうです。休日、賃金、労働時間制度がすべて関係します。しかも、所定休日の決め方、賃金の形態、現場の動かし方は会社ごとに違います。他の会社の規定をそのまま持ってきても、自社には合わないことが多いのです。

農業の場合

なお、屋外作業という点では、農業も同じ問題に直面します。

ただし、農業に従事する労働者には、労働基準法の休日に関する規定が適用されません(労働基準法第41条)。一方、休業手当の規定は農業にも適用されるため注意が必要です。

当事務所の場合

あべ社労士事務所の代表社労士は、厚生労働省労働基準局で労働基準法令・労働安全衛生法令の政策立案に従事してきました。

天候に左右される現場を持つ会社では、休日の定め方、振替の手続き、休業時の賃金の扱い、労働時間制度を、ひとまとまりで設計する必要があります。当事務所の「就業規則作成・運用支援コンサルティング」では、御社の現場の動かし方を伺ったうえで、実態に合った規定を作成します。

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