定年退職と定年解雇の違いは何か?

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今回のポイント

Q:定年退職と定年解雇の違いは何か?
A:定年に達したときに当然に労働契約が終了するのが定年退職、会社が解雇の意思表示をして終了させるのが定年解雇である。定年解雇には、解雇予告など労働基準法の解雇の規制が適用される。

定年退職と定年解雇の違い

定年による労働契約の終わり方には、次の2種類があります。

  • 定年退職:定年に達したときに、会社の特別な意思表示がなくても、当然に労働契約が終了する
  • 定年解雇:定年に達したときに、会社が解雇の意思表示をすることで、労働契約が終了する
比較項目定年退職定年解雇
契約が終了する仕組み定年に達したことで当然に終了会社の解雇の意思表示により終了
会社の意思表示不要必要
解雇予告(労働基準法第20条)不要必要
解雇制限(労働基準法第19条)適用されない適用される
Qちゃん
定年で辞めることに変わりはないのに、そんなに違いがあるんですか?
A先生
定年解雇は「解雇」ですから、労働基準法の解雇に関する規制がそのまま適用されます。同じ定年でも、会社が取るべき手続きが変わります。

どちらになるかは就業規則で決まる

どちらにあたるかは、就業規則の書き方で決まります。退職に関する事項は、解雇の事由を含めて、就業規則に必ず記載しなければならない事項です(労働基準法第89条第3号)。

定年退職になる規定

退職の章に、定年に達したら退職となることを定めます。

  • 従業員の定年は満60歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。

なお、定年を定める場合、60歳を下回ることはできません(高年齢者雇用安定法第8条)。65歳未満の定年を定めている会社は、65歳までの雇用を確保する措置も必要です(同法第9条)。

定年解雇になる規定

解雇の事由の中に定年を書いている場合は、定年解雇にあたります。

  • (解雇)従業員が次のいずれかに該当するときは、解雇する。
    • 満60歳の定年に達したとき

定年の定めがない場合

就業規則に定年の定めがなければ、その会社に定年はないことになります。

この会社が、一定の年齢に達したことを理由に従業員に辞めてもらおうとすれば、解雇するしかありません。解雇予告などの手続きが必要になるうえ、その解雇に客観的に合理的な理由があるかも問われることになります(労働契約法第16条)。

定年退職が解雇にあたらないための条件

定年退職が解雇にあたらないことは、行政解釈で示されています。

昭和26年8月9日基収第3388号

就業規則に定める定年制が労働者の定年に達した翌日をもってその雇用契約は自動的に終了する旨を定めたことが明らかであり、かつ従来この規定に基づいて定年に達した場合に当然雇用関係が消滅する慣行となっていて、それを従業員に徹底させる措置をとっている場合は、解雇の問題を生ぜず、したがってまた法第19条の問題を生じない。

なお、就業規則に定めがあるだけでなく、その定めどおりに運用され、従業員に周知されていることが前提です。

関連:就業規則の周知義務に違反するとどうなるか? 罰則と無効になる判例

定年解雇に適用される規制

定年解雇には、次の2つの規制が適用されます。

解雇予告

労働基準法第20条第1項(解雇の予告)
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。定年の日が分かっているからといって、予告が不要になるわけではありません。

解雇制限

労働基準法第19条第1項(解雇制限)
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によって休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によって打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りでない。

業務上のけがや病気で休業している期間とその後30日間、産前産後の休業期間とその後30日間は、解雇できません。

労災で休業中の従業員が定年を迎えた場合

2つの違いが最もはっきり表れるのが、業務上のけがや病気で休業している従業員が定年を迎えた場合です。

  • 定年退職の場合:前述の行政解釈のとおり、解雇の問題は生じません。休業中であっても、就業規則で定めた退職日に労働契約は終了します。
  • 定年解雇の場合:解雇制限が適用されます。休業している期間とその後30日間は解雇できないため、定年に達しても労働契約を終了させることができません。
Qちゃん
定年退職になると、労災保険の給付も止まってしまうんですか?
A先生
止まりません。労災保険の給付を受ける権利は、退職によって変更されないと定められています(労働者災害補償保険法第12条の5)。退職後も、要件を満たすかぎり給付は続きます。

なお、65歳までの継続雇用制度を設けている会社では、定年退職となった従業員が再雇用を希望した場合にどう対応するかという問題が、これとは別に残ります。

「定年に達した日」はいつか

規定を書くときに見落としやすいのが、「定年に達した日」がいつを指すかです。

法律上、年齢は誕生日の前日に加算されます(年齢計算ニ関スル法律)。したがって、「満60歳に達した日」は、60歳の誕生日の前日です。

  • 「満60歳に達した日をもって退職とする」:退職日は誕生日の前日
  • 「満60歳に達した日の属する月の末日をもって退職とする」:4月1日生まれの従業員は、3月31日に満60歳に達するので、退職日は3月31日
Qちゃん
4月1日生まれの方は、4月末ではなく3月末に退職になるんですね。
A先生
はい。会社の意図と1か月ずれることになります。だからこそ、会社としていつを退職日にしたいのかを決めたうえで、そのとおりに読める就業規則にしておくことが大切です。

実際にあった定年の規定漏れ

これまで関わった中には「就業規則に定年の定めがない」という会社が数社ありました。

いずれも、定年を設けないと決めていたわけではありません。

会社は「60歳で定年」と考えていながら、就業規則の中に規定が入っておらず、そのことに気づいていなかったというものです。この状態では、従業員に辞めてもらうには解雇の手続きを取るしかなく、会社が想定していた定年は、就業規則上は存在しないことになります。

退職の場面は、もともとトラブルになりやすいところです。退職と解雇の規定は、会社の意図どおりになっているかを確認しておくことをお勧めします。

当事務所の場合

あべ社労士事務所の代表社労士は、厚生労働省労働基準局で労働基準法令・労働安全衛生法令の政策立案に従事してきました。

当事務所の「就業規則作成・運用支援コンサルティング」では、退職・解雇の章についても、会社の意図と規定の文言が一致しているかを条文ごとに確認しながら作成します。

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