大入袋は社会保険の報酬に含まれるか?

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社労士事務所・業界の慣習の中には一般常識から考えておかしい部分が正直あります。しかし半ばタブーとされている質問であっても業界として信頼を得るためには、正直かつ本音で回答することが重要と考えます。

今回のポイント

Q:大入袋は社会保険の報酬に含まれるか?
A:臨時的なものであれば、金額にかかわらず報酬・賞与に含まれない。ただし臨時的かどうかは極めて狭く解され、例年支給している、支給時期が決まっている、業績に連動しているといった場合は報酬または賞与となる可能性がある。

大入袋(おおいりぶくろ)は、もともと興行で客の入りが多かったときに配られる縁起物の祝儀です。

社会保険では「報酬としないもの」の例として挙げられていますが、大入袋という名目であれば何でも対象外になるわけではありません。

社会保険の「報酬」と大入袋

健康保険法・厚生年金保険法では、報酬を次のように定めています。

健康保険法第3条第5項
この法律において「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。

「三月を超える期間ごとに受けるもの」は報酬から外れますが、賞与として標準賞与額の対象になります(同条第6項)。一方、「臨時に受けるもの」は報酬にも賞与にも含まれません。

大入袋が報酬・賞与の対象外とされるのは、この「臨時に受けるもの」にあたるためです。ただし、日本年金機構の事例集は、これに該当するものは「極めて限定的」としています。

Qちゃん
大入袋って、中身は数百円くらいのイメージです。1万円でも報酬にならないんですか?
A先生
まさにその点を年金事務所が日本年金機構に照会した事例があるんです。見るべきは金額よりも、支給の仕方です。

1万円の大入袋に関する疑義照会回答

日本年金機構の疑義照会回答(厚生年金保険 適用)に、次の事例が掲載されています。

  • 支払項目:大入袋
  • 支払金額:1万円
  • 給与支払にかかる社内規定:なし
  • 賃金台帳:記載あり

回答のポイントは次の3つです。

臨時的であれば金額は問わない

回答は、支給原因・条件が不明なため一律には判断できないとしたうえで、仮に臨時的であれば、金額の大小に関係なく報酬としない取扱いが妥当としています。

臨時的かどうかは極めて狭く解する

臨時的かどうかについては、次のように補足されています。

臨時的かどうかの判断は、支給事由の発生、原因が不確定なものであり、極めて狭義に解するものとすることとされていますので、例年支給されていないか、支払われる時期が決まっていないかで判断してください。

毎年支給している、または支給時期が決まっている大入袋は、臨時的とはいえないということです。

業績に連動するものは恩恵的といえない

臨時的でない場合でも、会社が恩恵的に支給するもの(見舞金、結婚祝金など)であれば報酬・賞与から除かれます。

しかし、この事例については、賃金台帳に記載があり金額が1万円であることに加え、支給事由が業績達成や営業成績に連動しているものであれば、恩恵的ではないと判断するのが妥当とされています。

出典:日本年金機構・疑義照会回答(厚生年金保険 適用)「被保険者資格取得届」整理番号5、標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集

Qちゃん
「決算で利益が出たら毎年、大入袋を出している」と聞いたことがありますが、その場合は臨時的とは言えなそうですね。
A先生
はい。例年支給していて、しかも利益に連動しているなら、名目が大入袋でも賞与として扱うことになると考えます。

社会保険以外での扱い

大入袋が社会保険の報酬に含まれない場合でも、ほかの制度では扱いが異なります。

制度大入袋の扱い
社会保険(健康保険・厚生年金保険)臨時的であれば報酬・賞与に含まれない
雇用保険事業の利益があった都度支払われる大入袋は「臨時に支払われる賃金」にあたり、賃金に含まれる(基本手当の賃金日額の計算からは除かれる)
割増賃金の基礎「臨時に支払われた賃金」にあたれば除外できる(労働基準法施行規則第21条第4号)。毎月の業績に応じて支給している場合などは除外できない

雇用保険の扱いは「雇用保険に関する業務取扱要領」(50452)によります。社会保険では「臨時に受けるもの」は労働の対償であっても報酬から外れますが、雇用保険や労働基準法では、臨時の支給も賃金であることに変わりはありません。

関連:割増賃金の計算において除外できる・除外できない手当

就業規則・賃金規程との関係

支給基準を賃金規程に定めたり、毎年決まった時期に支給したりすると、臨時的とも恩恵的ともいえなくなる可能性があります。

日本年金機構の事例集も、恩恵的に支給するものであっても、労働協約等に基づき経常的に支払う場合は報酬等に該当するとしています。

業績や営業成績に連動させて支給するのであれば、大入袋という名目にこだわらず、賞与や手当として賃金規程に定めるのが筋です。また、その場合は賃金台帳への記入も必要になります。

関連:賃金台帳の記載事項・保存期間・実務上の注意点

関連:人事労務関係の書類の保存期間

Qちゃん
「大入袋」という名前にしておけば社会保険料がかからない、というわけではないんですね。
A先生
そうなんです。判断されるのは名目ではなく、支給の実態です。最終的な判断は年金事務所が行うことにも注意が必要です。

当事務所の場合

大入袋や寸志のように、名目はあっても規程に定めのない支給は、社会保険・雇用保険・割増賃金のそれぞれで扱いを確認する必要があります。支給を続けるうちに臨時的とはいえなくなっている例も少なくありません。

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