育児休業と計画年休はどちらが優先されるのか?

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今回のポイント

Q:育児休業と計画年休はどちらが優先されるのか?
A:育児休業の申出と計画年休の成立のどちらが先だったかで決まる。計画年休が先に成立していれば、育児休業期間中の日であっても年次有給休暇を取得したことになり、会社に賃金の支払義務が生じる。

年次有給休暇の計画的付与制度(計画年休)を導入している会社で、年間カレンダーを決めた後に従業員から育児休業の申出があったとき、育児休業の期間に含まれる計画年休の日をどう扱うか?

細かいことのように感じるかもしれませんが、これは実際によくあるケースです。そして誤った処理をしている会社は意外と多くあります。

育児休業中は年次有給休暇を取得できない

計画年休の前に、育児休業と年次有給休暇の関係を確認しておきます。

すでに育児休業を取得している従業員は、その期間中に年次有給休暇を取得することはできません。

休暇とは、本来は労働義務のある日について、その義務が免除される日のことです。育児休業中はすでに労働義務が免除されているので、年次有給休暇を請求する余地がありません。

この点は、行政通達(平成3年12月20日基発第712号)で示されています。

年次有給休暇は、労働義務のある日についてのみ請求できるものであるから、育児休業申出後には、育児休業期間中の日について年次有給休暇を請求する余地はないこと。

関連:休日と休暇の違い、法定休日と所定休日の違い

育児休業の申出と年次有給休暇の請求の先後で決まる

では、これから育児休業を取得する予定の従業員はどうでしょうか。この場合は、「育児休業の申出」と「年次有給休暇の請求」のどちらが先だったかで決まります。

次の例で考えます。

  • 4月1日:7月1日に年次有給休暇を取得することを請求した
  • 4月30日:6月1日から翌年5月31日までの育児休業を申し出た

7月1日は育児休業の期間に含まれますが、年次有給休暇の請求の方が先です。この場合、7月1日は年次有給休暇を取得したことになり、会社には賃金の支払義務が生じます。

同じ通達が、次のように示しています。

育児休業申出前に育児休業期間中の日について時季指定や労使協力に基づく計画付与が行われた場合には、当該日には年次有給休暇を取得したものと解され、当該日に係る賃金支払日については、使用者に所要の賃金支払の義務が生じるものであること。

Qちゃん
育児休業中なのに、その日だけ年休を取ったことになるんですね。
A先生
はい。先に成立していた年休が、後からの育児休業の申出によって消えるわけではありません。

計画年休の場合

計画年休も年次有給休暇の一種なので、考え方は同じです。「育児休業の申出」と「計画年休の成立」のどちらが先だったかで決まります。

労働基準法第39条第6項
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項から第三項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。

問題は、計画年休の方が先に成立していることが多いことです。

計画年休の日は、年間カレンダーをつくるときに決めるのが一般的です。たとえば4月1日に労使協定で1年分の計画年休の日を決め、その後に妊娠が分かり、従業員から育児休業の申出がある。このような流れは珍しくありません。

この場合、計画年休はすでに成立しているので、育児休業の期間中の日であっても、その従業員は年次有給休暇を取得したことになります。

計画年休が優先された場合に起きること

  • 従業員の年次有給休暇の日数が、その分だけ減る
  • 会社に、その日の賃金の支払義務が生じる
  • 育児休業中に賃金が支払われることになるため、その額によっては育児休業給付金に影響することがある

会社にとっては処理が煩雑になり、従業員にとっても年次有給休暇の日数が減るという結果になります。

Qちゃん
育児休業から復帰した後に使うつもりだった年休が、休業中に減ってしまうわけですね。
A先生
そうです。本人が知らないうちに減っていた、ということにもなりかねません。だからこそ、労使協定をつくる段階で手当てをしておく必要があります。

労使協定で対象から除外しておく

この問題は、計画年休の労使協定をつくる段階で手当てをしておくことで防げます。行政通達(昭和63年1月1日基発第1号)は、次のように示しています。

特別の事情により年次有給休暇の付与日があらかじめ定められることが適当でない労働者については、年次有給休暇の計画的付与の労使協定を結ぶ際、計画的付与の対象から除外することも含め、十分労使関係者が考慮するよう指導すること

つまり、育児休業を取得する可能性のある従業員の扱いを、労使協定の中であらかじめ定めておくということです。どのような定めにするかは、会社の実情に合わせて労使で決めることになります。

関連:年休の計画的付与に関する労使協定の締結後、業務の都合で計画年休日を変更できるか?

出生時育児休業(産後パパ育休)の場合

出生時育児休業(産後パパ育休)についても、考え方は同じです。

出生時育児休業は、子の出生後8週間以内に、4週間まで取得できる休業です。期間が短く、取得する時期が出産の時期に左右されるため、夏季や年末年始に設定した計画年休の日と重なることがあります。

男性従業員の育児休業の取得が増えている会社では、計画年休の労使協定に、出生時育児休業も含めて除外の定めを置いているかを確認しておくことをお勧めします。

Qちゃん
除外の定めがないまま、すでに育児休業の申出が出ている場合は、どうすればよいのでしょうか?
A先生
その場合の取扱いは、個別の事情を踏まえて判断することになります。まずは、労使協定の内容と、申出や計画年休の成立の時期を整理するところから始めてください。

当事務所の場合

あべ社労士事務所の代表社労士は、厚生労働省労働基準局で労働基準法令・労働安全衛生法令の政策立案に従事してきました。

当事務所の労務監査では、年次有給休暇の計画的付与について、労使協定の内容と実際の運用が合っているかを確認します。

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経営労務診断基準の51項目と独自の労働安全衛生法の点検項目に沿って、厚生労働省労働基準局出身の代表社労士自らが点検します。

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