管理者とは? その役割と労働基準法上の法的責任

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「管理者(管理職)とは何か」を一言で言えば、経営者の方針を具体的な指示に落とし込み、部下を動かして成果を出す役割を担う人です。

また管理者は、労働法令的には、使用者と労働者の双方の性質を併せ持ち、重い責任を課される立場にあります。

今回は、管理者の本来の役割を整理したうえで、管理者が部下に「言ってはいけない言葉」を具体例とともに解説します。単なる用語解説にとどまらず、労働基準法上の位置づけや、管理者が問われる法的責任まで踏み込んで説明します。

経営者・人事労務担当者が、管理者の育成や労務管理を考えるうえでの一助となれば幸いです。

管理者の役割は具体性

日本中のすべての会社で「効率的な仕事」が求められています。しかし、管理者は部下に対して「効率的に仕事をしよう」と言ってはダメです。

Qちゃん
「効率的に仕事をしよう」って、つい言っちゃいそうですけど、ダメなんですか?
A先生
はい、それは経営者が言うべき「かけ声」です。管理者の役割は、そのかけ声・号令を具体的な行動に翻訳することであり、抽象的な言葉を投げるだけでは、実は何も管理していないのと同じなんです。

新規事業や業務改善など組織として成長するために新しいことにチャレンジしていかなければ、組織は停滞します。

新しいチャレンジには多大なエネルギーが必要です。だからこそ、経営者は従業員に継続して根気強くハッパをかけていく、言わばエネルギーを注入し続ける必要があります。

海外で痛感する管理者の役割

「何も言わなくてもみんなわかってくれる」というのは、もはや今の時代には通用しません。

海外に進出した日本企業はこの問題を痛感します。

実際、私は海外勤務をした際に経験しましたし、日本企業の方からもよく聞きました。

日本で働いていると「何も言わなくても同僚や部下はわかってくれる」という状態が普通だと考えてしまいます。いわゆる「同じ釜の飯を食った仲間たち」です。

日本の職場環境に慣れていると、しまいには「言われる前に気づきなさい」などと考えてしまうことさえありますが、海外に進出したときに痛感するわけです。「指示をしなきゃ誰もやってくれない・・・」と。

指示をしなくても部下が動いてくれるといった自律的な組織は理想かもしれませんが、これは管理者の役割放棄、もっと厳しく言うと、部下への責任転嫁とみなされる可能性さえあります。

管理者の役割は部下を動かすこと

管理者の役割は、経営者の求める内容を具体化して部下に指示することです。

「自律的な働き方」「部下に業務の取捨選択を任せる」といった言葉は耳障りの良い言葉ですが、多くの場合、単なる「無管理」「放置」といった状態になっていきます。

部下が持ってきた書類に印鑑を押すことだけが管理者の仕事ではありません。

「できる管理者」と「できない管理者」の大きな違いは部下を動かせるかどうかです。仮にプレイヤーとして能力が低い人でも、部下を動かせるのであれば、それは優秀な管理者です。

管理者が行うことは、

  • みんなが効率的に仕事をするのに、私が管理者としてできることは何だろうか?

という自問自答です。顧客からの要望に対応している部下が社内の煩雑な手続きに苦労しているなら、働きやすいように改善していくのが管理者の役割です。

経営の成功に必要な3つの属性

名著「はじめの一歩を踏み出そう - 成功する人たちの起業術」では、経営の成功のためには、起業家、管理者、職人という3つの属性が必要不可欠であると指摘しています。

1人で事業を行うのであれば「起業家」「管理者」「職人」の3つの属性をバランス良く、状況に応じて、まるで人格を変えるかのように変身すること、集団による会社組織の場合は、1つの属性に秀でた人を採用しバランス良く配置することが成功の秘訣と説いています。

すなわち、同書が指摘する重要な点は、求められている役割はそれぞれ異なるということです。逆にいえば、役割が重複するのであれば、そもそもその役割は不要ということ、そして役割のバランスを崩しているときに組織はおかしくなっているということです。

Qちゃん
1人で全部の属性をこなすのって、大変じゃないですか?
A先生
はい、だからこそ役割の違いを意識することが大切です。優秀な職人が、そのまま優秀な管理者になれるとは限らない、という点は特に見落とされがちです。

部下もマネージャーを求めている – ただし条件付きで

1兆ドルコーチ - シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え」という本の中に、マネージャーを置くべきか否かを問答した面白い一節があります(p62〜)。

彼はラリーとセルゲイと廊下をぶらぶら歩いて、二人のソフトウェアエンジニアを見つけた。ビルはその一人に、マネージャーがほしいかと尋ねた。ええ、という返事だった。
なぜだ?
「何かを学ばせてくれる人や、議論に決着をつけてくれる人が必要だから」
その日彼らは数人のソフトウェアエンジニアと話したが、答えはほとんど同じだった。
エンジニアは管理されたがっていた — 何かを学ばせてくれ、意思決定の助けになるマネージャーになら。

最後の部分がポイントです。何かを学ばせてくれ、意思決定の助けになる管理者なら必要、そうでない管理者なら不要、これが多くの方の本音でしょう。

Qちゃん
「何かを学ばせてくれ、意思決定の助けになる管理者なら必要、そうでない管理者なら不要」って、すごくわかります。
A先生
現実はどちらが多いのか・・・

管理者は法的に「使用者」でもある

そもそも管理者とは、法的にどのような位置付けなのかを理解しておくことも重要です。

問題が起こったら経営者や人事の問題と思っている管理者が意外と多くいますが、これは大きな間違いです。直接的な責任を負い、逃げることができないのは、多くの場合、直属の管理者です。

その理由は、労働基準法の「使用者」の定義にあります。

労働基準法第10条(定義)
この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。

「使用者」と聞くと経営者だけを指すと思われがちですが、条文の「その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」という部分に、中間管理職などの管理者が含まれます。

「自分は経営者ではないから関係ない」「自分は労働者だから責任を負わない」という理屈は通用しません。管理者は労働基準法上、使用者にも労働者にもなりうるということです。

Qちゃん
使用者って、社長や役員のことだと思っていました。管理職も入るんですね。
A先生
はい、この使用者の概念を説明すると、それまで他人事だった管理職の方が、途端に自分事として捉えるようになります。

管理者は経営者より罰則を受けやすい

労働基準法は、使用者に様々な義務を課し、その義務を果たさない使用者に罰則を定めています。そして前述のとおり、使用者には経営者だけでなく管理者も含まれます。

つまり、労働基準法違反で罰則が課される場合、その対象となるのは経営者だけでなく、管理者も十分になりうるのです。

会社の規模によりますが、人事労務管理を現場に任せきりの経営者の場合、法令違反の事実を本当に知らないケースもあります。その場合、違反行為の事実を知り、行政指導を受けても改善しなかった直接の責任は、直属の管理者が問われることになります。もちろん経営者の責任がゼロになるわけではありませんが。

実際、労働安全衛生法令の違反(労災かくしなど)で、管理者が書類送検された事例はいくつもあります。管理者の責任は、決して机上の話ではないのです。

まとめ

管理者の役割や責任は、時代とともに重くなっています。平成30年版の労働経済白書によると、61.1%の人が「管理者に昇進したくない」と回答していますし、今や「管理職は罰ゲーム」という言葉さえあります。

Qちゃん
責任が重くて罰則まであるなら、昇進したくない人が増えるのもわかる気がします・・・
A先生
ですね。だからこそ、管理者を1人で悩ませない組織づくりが、会社側に求められているのです。

だからこそ、経営者や人事労務担当者は、管理者を支援する意識を持つことが重要です。管理者を1人ぼっちにさせてはいけません。また管理者が労働基準法上「使用者」として重い責任を負う立場であることを、本人にも正しく理解してもらう必要があります。

「使用者とは誰か」「どこまでが管理者の責任か」といった線引きは、条文の知識と実際の運用実態の両方を踏まえて判断しなければ、思わぬ労務トラブルにつながりかねません。

判断に迷われる場面や、管理者の育成・人事労務の体制づくりでお困りの際は、お気軽に当事務所へご相談ください。

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